Arctic Environment Research Center

特別講演会「ロシアの科学技術政策と北極研究」を開催いたしました

平成27年1月14日(水)国立極地研究所大会議室で科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)海外動向ユニットフェロー・津田憂子氏による「ロシアの科学技術政策と北極研究」の特別講演を開催しました。

ロシアの科学技術が直面している問題、特に軍事関連技術偏重型の科学技術発展という過去の構図から抜け出せないため、民生分野の科学技術開発が遅れ、イノベーションが起きにくいという背景を説明したあとで、現在行われている「科学技術政策に関する国家プログラム」等の紹介と改革の動きについての解説があった。

ロシア政府は、このプログラムの実施により、2020年までに競争力があり効率的に機能する研究セクターの形成と、民間資本を積極的に呼び込むことを目指している。研究・教育分野の改革の一環として、政府が大学の研究機能強化を高めていくという方針を打ち出したが、これはこれまで特に基礎研究の中心的担い手であったロシア科学アカデミーの反発を招く結果となった。運営の不透明さや人事の高齢化、頭脳流出、施設の老朽化等、ロシア科学アカデミーの抱える問題は顕著であり、ロシア科学アカデミーの再生に向けた改革が始まっている。

このようなロシアの科学技術戦略改革の説明のあと、プーチン政権における極東重視政策や北極研究についての具体的な活動に言及があった。

極東における中国のプレゼンスが高まりつつある中、ロシア政府としてはそうした動きに警戒をしつつも、アジア太平洋諸国の活力と繁栄を同地域の開発に導入したいという切実な願いがある。実際、極東の豊かな地下資源や河川・海は、繁栄への大きなポテンシャルとして期待できるものである。

また北極に関しては世界的な注目を浴びる北極海航路の活用や豊富な天然資源の利用、スピッツベルゲンにおける国立研究センターの設立構想を中心に、政府主導で新しい国際関係を構築しながら科学技術研究を推進しようとしているロシア側の政策や動きについて説明があった。我が国の北極研究にとってもロシアといかに協調的な共同研究を進めていくかが今後の鍵となる。

最後にロシアで観測を行ってきている研究者や海運会社、報道関係者などからロシア特有の事情を理解しようとする具体的な質疑が活発に行われ、幕を閉じた。

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