ルイサンローラン観測チーム

ルイサンローランの生活あれこれ(2014.9.28)

現在地:カナダ海盆(北緯73度09分、東経142度06分)
チームメンバー:田中康弘,星野聖太(北見工業大学大学院)

写真1 ヘリ搭乗前

前回の報告後、筆者らは9月22日に無事ルイサンローランへと乗船することが出来ました。早いもので筆者らが日本を出て早くも2週間弱が過ぎ、食生活や生活習慣にも慣れ、会話のところどころに小粋なジョークを挟めるようになりました。この間の天気は、ほとんどが曇りでホッキョクグマ等の動物をまだ見ることができていません。今回は、乗船者やイベントに関して報告させていただきます。

写真2 イベントにてバーに集まる人々

写真3 北極通過儀式前

写真4 誕生日ケーキ

写真5 JOIS2014観測予定航路

写真6 割れた海氷(船のデッキより撮影)

写真7 XCD観測風景

写真8 観測機材。奥がEM、手前がPMR

写真9 船の先端に付けられた放射収支計

写真10 PMR設置風景

写真11 EM設置風景

写真12 海氷域にて海氷に沈む夕日(船から撮影)

乗船者紹介

まず、今回参加する科学者の所属先や人数を簡単に説明をさせていただきます。JOIS2014では、カナダIOS(Institute of Ocean Sciences)のBill Williamsさん をチーフサイエンティストとして30人の科学者が参加しています。IOS以外にも、ブイの設置揚収を行うウッズホール、アメリカ海氷大気庁、ワシントン大学等の様々な研究機関からルイサンローランに乗船することになりました。

日本時間9月22日にケンブリッジベイ空港へ到着後、別の便で空港に来ていた海外の科学者とヘリコプターへの搭乗を手助けしてくれる4〜5人のカナダ沿岸警備隊の乗組員の方々に迎えられました。前回お伝えしましたが、空港から船までは写真1のヘリコプターで移動します。ヘリコプターの搭乗は10分くらいで終了しましたが、低空飛行や船に近づくために大きく旋回するなどとても迫力があり忘れられない初体験になりました。

ルイサンローランに到着すると、まず安全講習と船内ツアーがあり乗組員の方に案内をしていただきました。1969年に建造され、1990年に大改装を行い近代砕氷船へと生まれ変わったルイサンローランは、最強クラスの砕氷船と言われています。前記のような歴史を持つ広い船内の中は古さを感じさせず、洗濯機、風呂場(シャワー室)はもちろんとして、ジムや売店まであります。その後、食堂にて食事を取り、バーでお酒を飲みました。長旅の疲れが出たのか、この日はすぐに眠ってしまいました。

船内で催されるイベント

船内では、日々色々なイベントが催されます(写真2のように沢山の人がバーに集まる)。その中でも一番厳しかったのは、生卵を渡され守るという北極通過儀式です。期日まで卵を守れないと一人ずつヘリハンガーに呼ばれ写真3のように目隠しをされたあと、その数だけ頭の上でグチャッと潰されるという儀式になります。筆者は2個割ってしまったので、頭の上で卵を2個割られ、さらにシーザードレッシングまでかけられました。儀式を受けた後にシャワー室へ駆け込みましたが、なぜかシャワーから水しか出ず凍えそうになりながら洗い流しました(後日聞いた話によると、お湯はわざと止められていたようです)。

筆者(星野)は偶然にも誕生日を乗船中に迎えることができたため、写真4のようなケーキを作っていただきました。とてもおいしかったのですが、やはり海外サイズなので食べるのに時間がかかりました。

現在位置

写真5はJOIS2014の観測航路です。タイトルが予定のままですが、現在のところ大きく変更された点はないためこの図を用いて説明させていただきます。予定航路の線の色は、青が濃くなるにつれ出発直後を示し、赤が濃くなるにつれ観測終了に近づくことを示しています。現在は、地図の真ん中付近のCB19の付近を航行中に本文を書いています。

船上観測

日本時間9月24日に筆者らを乗せた砕氷船ルイサンローランはいよいよ海氷域へと突入しました。写真6のように1m程度の海氷が存在する海氷域に入ると静かだった船内が、‘ゴゴン’という砕氷音でガラリと雰囲気を変わりました。海氷域に進入するといよいよ筆者らの観測が始まります。海氷(海洋)観測は筆者らとワシントン大学から来ているAlek、Sam合わせて4人で行います。その観測項目は目視観測とXCTD(eXpendable Conductivity、 Temperature & Depth)です。目視観測はブリッジから海氷の厚さ、海氷密接度、海氷の種類、視程、雲の種類、天気を観測します。写真7はXCTDの観測風景です。XCTDは目的の深さまでの水温、電気伝導度をプロファイルすることができます。XCTDを打つ際は、船のスピードを2〜4ノットまで減速させ、さらに海氷域では船から海氷を遠ざけてもらうようにお願いします。1000m程度の深さだと、1地点につきだいたい10分もかかりません。4人で1人ずつ6時間毎に交代し、この観測を行います。

その他、日本側の観測として電磁誘導式氷厚計(以下:SEM)、マイクロ波放射計(PMR)(写真8)、放射収支計(写真9)と呼ばれる装置を用いて海氷の厚さ、海氷表面の温度などを観測します。PMR以外の観測装置は、船のクレーンなどを使用するので筆者らのみでは設置することができないため(写真10)、乗組員の方々にお願いします(写真11)。

この1週間の海氷観測の感想は、厚い氷(3年以上残った氷)と薄い氷が混じって存在しておりいろいろな海氷が見え、飽きがきません。筆者(星野)は2013年11月〜2014年3月の間、第55次日本南極地域観測隊に参加しました。その際、南極海において観測した海氷状況はこのように様々な厚さの海氷が混在している地点は無く、とても印象に残っています(写真12)。

 ルイサンローランは現在海氷域を抜け開放水面を航行しています。日本時間9月30日火曜日に海氷域へとふたたび戻る予定です。