外田智千准教授(地圏研究グループ)が、平成22年度日本鉱物科学会第9回論文賞を授賞しました

掲載日:2011年9月13日

論文の和文タイトル

高温変成作用におけるザクロ石中のリンの組成累帯構造の発達と温度圧力履歴との結合:東南極リュツォ・ホルム岩体の例

著者

河上哲生(京都大学)、外田智千(国立極地研究所)

和文概要

 リン灰石をはじめとするリン酸塩鉱物は岩石中の副成分鉱物として広く存在する。しかしそれらの岩石学的役割には未解明の点が多い。リン灰石が高温変成岩・火成岩から低温熱水性環境まで幅広く産出する一方、副成分として産する他のリン酸塩鉱物は必ずしも同様に産状にない。天然でのリン酸塩鉱物の多様な産状は、この鉱物グループが高温でのメルトや流体と固体岩石との相互作用、特に高温変成岩での部分融解メルトの生成過程を解明する上で重要な手がかりとなる可能性を示唆する。

 この研究では、東南極リュツォ・ホルム岩体のグラニュライト相変成岩中のザクロ石斑状変晶にリンの組成累帯構造が存在することを見いだし、この組成累帯構造とリン灰石およびモナズ石という2種類のリン酸塩鉱物の包有関係が密接に関連すること、また通常の珪酸塩変成鉱物の包有関係も対応して系統的に変化することを丁寧に記載した。このデータにより、対象としたザクロ石の主成分鉱物組成累帯構造が拡散によって改変されながらも、変成反応や部分融解プロセスなどの岩石の複雑な形成史を明らかにすることに成功した。

 この新たな手法の特色は、これまであまり注目されることの少なかった岩石中の副成分鉱物や副成分元素の挙動に注目した解析が高温の岩石の融解を伴うようなプロセスの理解に有効であるということを示し、今回の解析手法の成功によって、今後、リンの組成累帯構造やリン酸塩包有物鉱物の分布の解析をもとに、高温変成作用や融解作用を伴う変成履歴の解明の手がかりとなり、高温型・超高温変成作用の研究の推進に貢献することができると考えられる。