極域科学・宙空圏・気水圏・生物・地学・南極隕石
シンポジウムを開催しました

掲載日:2011年11月14日

昨年に引き続いて今年度も、研究分野横断型セッションで構成する「極域科学シンポジウム」を11月14日〜18日の間に開催いたしました。今回は「氷床コア研究の最前線」をテーマとして、雪氷学や地球化学の他、古気候、古環境、微生物、宇宙にも関連した合同セッションを設定しました。また、従来の極域宙空圏・気水圏・地学・生物・南極隕石シンポジウムも開催することによって、各分野における議論を深め、広く情報交換する場としました。研究発表は当研究所の他に統計数理研究所、国立国語研究所を加えた3会場で行ない、会期中は482名の参加者(延べ900名以上)がありました。各シンポジウム・セッションの概要は次のとおりです。

合同セッション「氷床コア研究の最前線」(16日)

総合研究棟2階大会議室で開催した本セッションの発表件数は、38件(口頭:24、ポスター14)であった。南極ドームふじ深層氷床コアの研究成果を中心として、南極やグリーンランド氷床コアに関する多彩な成果が発表された。内容としては気候環境研究に始まり、氷床コアの物理、シグナル形成プロセス、微生物や宇宙に関する研究まで、研究成果が幅広く発表された。招待講演を含む海外の研究者からは、北半球最古のグリーンランド氷床コアを得る国際共同掘削(North Greenland Eemian Ice Drilling:NEEM)やアメリカによるWest Antarctic Ice Sheet(WAIS)Divideコア採取など、最新の掘削プロジェクトに関する報告・成果発表が行われた。

第35回極域宙空圏シンポジウムおよび関連共通セッション(14〜16日)

極域の中層大気から熱圏、電離圏、磁気圏、および各種オーロラ現象に関して、南北両極域で蓄積された観測データの解析結果はもとより、モデルやシミュレーションも取り入れた研究成果や将来展望について、招待講演1件を含む71件(口頭42、ポスター29)の発表があった。共通セッション「中層大気・熱圏」および「新観測技術・将来計画」では、南極昭和基地に新しく設置された大型大気レーダー(PANSY)やレイリーライダー、ミリ波分光計など、変動する地球気候の中で極域の果たす役割を明らかにする手がかりを与えると期待される装置群の最新の観測成果・解析結果の報告、さらに南極域無人磁力計ネットワークの拡充や、北極域のEISCAT-3Dレーダー計画、南極内陸域における天文観測計画等の講演が、大きな関心を集めた。特に、英語によるセッション(中層大気・熱圏の一部)では、海外(露、加、米、英)からの参加者とも活発な議論、意見交換が行われた。オーロラセッションでは、計算機の進歩をいち早く取り入れた高分解能シミュレーションや、新型測器による超高速撮像の観測結果が報告され、また口頭発表の最後では、脈動オーロラに関する未解明問題と今後の技術進歩を見据えた新しい観測手法・解析の切り口についての講演が会場を興奮に包んだ。

第34回極域気水圏シンポジウム(14〜15日、17日)

気水圏分野における発表数は、43件(口頭:28、ポスター:15)であった。口頭セッションは大気、雪氷、海洋・海氷の分野別に構成し、各ポスターセッションでは約1時間のコアタイムを設けた。発表内容としては、極域気水圏の諸現象のプロセス研究や、物質循環・水蒸気輸送を取扱った研究、グローバルスケールのモデル研究、南極底層水形成に関する研究など多岐にわたる成果が発表され、議論が交わされた。対象地域も、南北両極域に加えてモンゴルや日本の山岳雪氷など、極域研究と関連して多様に展開する研究成果が発表された。

第31回極域地学シンポジウムおよび関連共通セッション(15〜17日)

「極域から探る固体地球ダイナミクス」をテーマとして、測地・固体地球物理、第四紀・地形、極域海洋底、地質・岩石に関連する58件(口頭:31、ポスター:27)の講演が行われた。国際極年で実施した南極大陸の内陸部における地球物理国際共同研究の最新の成果、セール・ロンダーネ山地等での第四紀・地質調査、新しらせによる船上観測や南大洋での深層掘削の成果等が発表され、活発な議論が行われた。共通セッションとして、「大気‐海洋‐雪氷‐固体地球の相互作用」が開催され、計14件(口頭:11、ポスター:3)が講演された。両極域での現地観測や衛星データ解析、氷床融解のモデリング、大気波動や波浪・地震波などの伝播特性の研究等、極域の地球表層部における物理的相互作用についての現況把握と情報交換、活発な意見交換が行われた。

第33回極域生物シンポジウムおよび関連共通セッション(16〜18日)

口頭24件、ポスター28件の発表が行われた。気水圏−生物圏合同セッションでは、「重点研究観測サブテーマ2」および「海氷圏の生物地球化学」をテーマとして南極海氷圏における観測の現況が取りまとめられた。海洋生物セッションでは、「Southern Ocean Ecosystem Sentinel Program」をテーマとして日本・オーストラリア共同研究に向けた取り組みが検討された。陸上生物セッションでは、「Pattern and process of terrestrial ecosystem in polar region」をテーマとして様々な分類群を対象とした幅広い研究観測が紹介されるとともに、将来の展望が議論された。

第34回南極隕石シンポジウム(17〜18日)

海外からも26名の参加者があり、51件(口頭:38、ポスター:13)の一般講演と2件の招待講演が行なわれた。隕石探査から隕石、月、火星の物質分化、さらに惑星探査まで、幅広い領域にわたる研究成果について、活発な議論がなされた。招待講演は、いずれも酸素同位体に関連するもので、太陽系の形成に関して強い制約を与える酸素同位体の重要性について理解がいっそう深まった。