内藤靖彦名誉教授と高橋晃周准教授(生物圏研究グループ)が、平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞しました

掲載日:2012年4月19日

業績名

バイオロギング手法の開発と海洋生物の行動生態の研究

表彰を受けた当該研究の概要

海洋生物の水中行動・生態の正確な把握は、海洋環境に対する生物適応の研究や海洋生物資源の効果的な保全・合理的な利用を行う上で欠かせない。しかし、海洋を自由に移動する野生生物の研究手法は未熟で、水中行動・生態の解明が遅れていた。

背中に記録計を装着したアデリーペンギン

本研究において、国立極地研究所は小型かつ多機能な行動・環境情報記録計を海洋生物に直接とりつけて観測を行う「バイオロギング」手法を世界に先駆けて開発した。この手法による海洋生物の研究を、国立極地研究所・東京大学大気海洋研究所の共同利用研究を軸として、国内外の研究者との共同研究として推進した。海生哺乳類、海鳥類、ウミガメ類、魚類など100種以上の生物に対してこの手法を適用し、高精度の行動・生態情報を取得することに成功した。

本研究により、様々な海洋生物が大きな体サイズの違いにもかかわらず秒速2m程度で遊泳することが豊富なデータによって世界で初めて実証されるなど、水産資源重要種を含む海洋生物の水中行動・生態についての新しい知見が得られた。

本成果は、海洋生物の行動生態の直接的な計測を可能とし、海洋生態系に関する情報の高精度化に貢献する。また世界の様々な海域において海洋生物資源の保全・利用に寄与することが期待される。

受賞は東京大学大気海洋研究所の佐藤克文准教授との共同受賞で、受賞者3名は本手法を用いた国内外の共同研究を牽引した。