昭和基地では、9月後半から天気のよい日が続いています。春分(日本では秋分)を過ぎ、朝4時前には空が白み始め、夜9時頃まで照明なしで外を歩くことができます。この日射しに誘われたかのように、ウェッデルアザラシを基地の周辺で見かけることが多くなりました。
島や氷山の周囲にはクラック(海氷の割れ目)があり、アザラシはクラックの一部を歯で削り、呼吸用の穴を作っています。穴と言っても、体長約2.5メートル、体重約400キログラムのアザラシが、海と海氷上を往き来する出入り口にもなっているため、人間の大人よりも一回り、いや二回り以上大きいのです。放っておけば凍ってしまうので、見たことはありませんが、穴を維持する作業は、きっととても大変なのではないでしょうか。
9月中旬に、基地から40キロメートルほど南の島を通りかかった時、3頭のアザラシが海氷上で日向ぼっこをしていました。この日、同じ場所を通ると、生まれたばかりの子供と母親がいました。つい最近、出産したものと思われます。「南極地域の環境の保護に関する法律」(*)に従い、アザラシ親子を刺激しないように遠巻きに観察しましたが、それでも、赤ちゃんアザラシのあまりの可愛さに、しばし見とれてしまいました。
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