我が国の南極観測は、2026年度に70周年を迎えます。1956年11月8日、砕氷船「宗谷」に乗った第1次南極観測隊が東京・晴海埠頭を出発し、日本の南極への挑戦が始まりました。そして1957年1月29日、厳しい自然環境のなかで隊員たちは昭和基地を創設し、本格的な観測活動が幕を開けました。現在では想像を絶する環境下での活動でしたが、第一歩を踏み出した先人たちの勇気と情熱は、今も私たちに受け継がれています。私たちはその精神を礎として、新たな挑戦を続けていきます。
この歩みの源流には、明治時代に南極探検を志した白瀬矗中尉の挑戦があります。白瀬隊が1912年に南極大陸への足跡を刻んでから半世紀を経て、その志は「宗谷」とともに再び極地へと受け継がれました。南極観測の原点には、未知の世界に挑み、科学をもって人類の未来に貢献しようとする、探究と挑戦の精神が息づいています。
以来70年にわたり、南極観測は気象・大気、雪氷、海洋、地球科学、生物、超高層物理、宇宙など幅広い分野で観測と研究を進め、地球温暖化や環境変動の理解、さらには国際社会における科学協力にも大きく貢献してきました。この70年の歩みは積み重ねられた挑戦の歴史であり、その精神は今も変わることなく続いています。
現在では、南極観測船「しらせ」による輸送に支えられた昭和基地および周辺地域での観測の継続に加え、過去の気候変動を解き明かすアイスコア掘削、南極氷床融解のメカニズムを探るトッテン氷河沖での海洋観測、そして大気大循環の変動を高精度で捉える南極唯一の大型大気レーダー(PANSYレーダー)による観測など、重点的な研究が進められています。
また、人工衛星データとの連携や自律型観測装置の活用など、最先端の科学技術を駆使した国際的な観測体制も整備されつつあります。こうした南極での観測は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による科学的評価においても重要な基礎データとして活用され、地球規模の気候変動の理解を支えています。これらの取り組みは、地球システムの理解をさらに深め、将来の気候予測や国際的な環境政策の基盤を支える重要な成果を生み出しています。
地球は今、気候変動や生物多様性の危機といった深刻な課題に直面しています。南極はその最前線であり、未来を考えるための重要な拠点です。IPCCなど国際的な科学評価が示すように、南極の変化は地球全体の気候システムに重大な影響を及ぼしています。私たちは「地球の未来を知る鍵は南極にある」というビジョンのもと、国際的な連携を一層深め、新たな技術の導入とともに観測・研究体制を構築しながら、次の世代へとこの取り組みを確実に引き継いでまいります。そして、未来へ向けた私たちの挑戦は、これからも続いていきます。
本特設サイトでは、宗谷の出発から昭和基地の創設、そして今日に至るまでの70年の歩みを振り返るとともに、皆さまと共にこの節目を分かち合い、南極観測の新たな未来へとつなげていければと考えています。70年の歴史を礎として、挑戦はこれからも続いていきます──その思いを、本サイトを通じて感じていただければ幸いです。
国立極地研究所長 野木義史







