ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCSとは

ArCSとは

北極域研究推進プロジェクト(ArCS: Arctic Challenge for Sustainability)は、文部科学省の補助事業として、国立極地研究所、海洋研究開発機構及び北海道大学の3機関が中心となって、2015年9月から2020年3月までの約4年半にわたって実施する、我が国の北極域研究のナショナルフラッグシッププロジェクトです。

プロジェクトの背景

北極域は、過去35年間で夏季の海氷面積が3分の2程度に減少するなど、気候変動の影響が最も顕著に表れている地域と言われています。北極域における環境の急激な変化は、北極域にとどまる問題ではなく地球全体の環境や生態系に大きな影響を与えることが懸念されています。一方、海氷の減少に伴い、北極海航路や新たな資源開発の可能性への期待も高まり、非北極圏諸国を含め、世界的に大きな注目を集めています。このようにリスクとチャンスの両面で北極に対する国際的な関心が高まるなか、研究者の予測よりも速いスピードで海氷が減少したことに象徴されるように、北極域の科学データは不足しており、科学的理解が未だ十分ではないことが国際的にも指摘されています。今後、北極域の環境がどのようなペースで変化し、またその変化が全球の気候・気象あるいは生態系にどのような影響を与え、さらに、人間活動の拡大と相まってこれらが社会や経済にどのようなインパクトを与えるかという科学的知見を得ることは、環境保全を大前提とする北極域の持続可能な利用の在り方を考える上でも喫緊の課題となっています。

また、近年、北極海航路を利用した船舶の航行実績が急増し、北極海沿岸域での大規模開発への投資も活発化してきているなか、外的環境の変化に対する回復が極めて脆弱な北極圏において持続可能な開発を可能とするためには、国際社会が連携して英知を結集し、秩序ある活動が確保される必要があります。今後、北極評議会(AC)や国際連合、学界、経済界においても、科学的知見に基づき、北極圏での活動についてのガバナンスのあり方や国際的なルール作りの議論が活発化することが予想されています。

このような北極を巡る国際的な情勢変化を踏まえ、これまでにも増して、戦略性をもって北極の諸問題に関する政策判断や課題解決に資する研究成果を適切にステークホルダー(国際的機関、行政、民間、NGO等の関係機関及び関係者)に伝え、国際的な議論に積極的に関与することを念頭においた研究をより強化する必要があります。

プロジェクトの目的

本プロジェクトは、急変する北極域の気候変動の解明と環境変化、社会への影響を明らかにし、内外のステークホルダーが持続可能な北極の利用等諸課題について適切な判断を可能とする精度の高い将来予測や環境影響評価等を行うことを目的としています。

そのため、国立極地研究所、海洋研究開発機構及び北海道大学の3機関が、関係各機関と連携し、気候・気象・海洋環境変動、短寿命大気汚染物質などの物質循環、及び生態系と生物多様性に関する研究を総合的に推進し、それらの包括的な研究から科学的な知見を統合し、データマネジメントや人文・社会科学的観点からの検討を加えた上で、ACなどの国際機関や国内外の政策決定者あるいは先住民コミュニティ等のステークホルダーにとって有効かつ重要な情報を提供します。

併せて、国際連携拠点の整備、若手研究者派遣事業を含む人材育成プログラム、AC等北極関連会合への専門家派遣を実施し、国際連携や若手人材の育成を推進します。