ArCS II 活動マップ
━ 新たな北極域研究を目指して ━
太陽放射
太陽は可視光線、紫外線・赤外線など、さまざまな波長の電磁波を放射しています。これを太陽放射といいます。北極圏では雪や氷が日射を反射して、寒冷な気候を作っていますが、近年の温暖化により雪氷面積が減り、日射が地表面で多く吸収されるため、雪氷アルベドフィードバックにより北極域の温暖化増幅が起きています。
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ブラックカーボン(BC)および
雲・エアロゾルの動態の解明
北極域大気中の温室効果気体やエアロゾルなどの大気物質や雲は、北極域の気候に大きな影響を与えていると考えられています。これらの大気物質や雲がどう変化するか、また変化の原因は何か、解明を目指します。
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雲の発生原因
大気中のエアロゾルは雲を作る核となります。これによって水蒸気が水滴や氷の粒へと変化を起こすことで雲の発生原因となります。雲の形成は大気の放射過程に関わるため気候変動にとって大きな研究課題であり、北極の海や陸地から舞い上がる物質や北極を取り囲む中緯度地域から流入する大気汚染性エアロゾルが雲の形成に与える影響が様々に研究されています。
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エアロゾル
大気中に浮遊する微粒子はまとめてエアロゾルと呼ばれています。エアロゾルの中には、砂埃、火山灰、海水の塩分(海塩粒子)、排気ガスに由来する硫酸塩粒子などがあります。北極域の夏は氷が融けた地面からエアロゾルのもととなる物質が放出され、そこに含まれる生物由来の物質は氷晶をつくる能力がとても高いことが知られています。
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CO2・CH4 フラックス観測
温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)が陸地、大気、海洋、森林などを移動する量をフラックスとして観測しています。これを継続的に観測することは、気候変動への影響の研究に重要です。ArCS IIではロシアとアラスカのフラックス観測タワーを研究基盤として活用しています。
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航空機観測
BC(ブラックカーボン)、二酸化炭素などの観測装置を航空機に取り付け、地上観測では捉えられないデータを広範囲・高頻度で取得しています。
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JAXA地球観測衛星による観測
地球観測衛星は、地球のさまざまな姿を宇宙から観測しています。北極域の研究に欠かせない積雪や海氷観測の主力として、また永久凍土の融解による地形変化、大気環境物質(エアロゾル)、温室効果ガス観測にも地球観測衛星データが使用されています。これらのデータは雪氷の変動把握や北極海航路予測、防災などに役立てられています。
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偏西風の蛇行
偏西風とは、北極と中緯度の境界を西向きに地球を周回する気流で、対流圏上部には強いジェット気流が存在します。海氷減少などで極域の熱や水蒸気の発生が変わると気圧配置に影響を与え、偏西風が蛇行することがあります。それが持続すると日本でも冬の寒波や大雪、夏の高温や豪雨など異常気象が起こります。
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気候変動の予測技術(の高精度化)
北極域環境の成り立ちと変動メカニズムを科学的に解明し、精確な気象気候予測手法の研究開発にむけて数値シミュレーションの改良を行います。高精度化された予測技術は、北極域の環境変化と北極域外での極端現象による災害への対応も可能にします。
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水産資源の調査
北方の海は豊かな漁場として、人々の暮らしを支えています。北極域の温暖化や海氷減少が北極域の海洋生態系にどのように影響し、将来の水産資源がどうなるのかの予測に役立てます。
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資源開発の現状分析
海氷減少により海底資源などの開発が注目を集めていますが、安易な開発は北極域の環境や生態系に大きなダメージを与え、地球全体の環境変化を拡大させるリスクもあることが指摘されています。資源利用と環境保全の最適な組み合わせを考えます。
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北極航路の経済性・リスク分析
北極海の海氷が減少し、北極航路の利用は今後増加することが見込まれています。安全で経済的な航路選定や船舶の選択を可能とするため、航路上の海氷情報の提供、学術的知見に基づく船舶の性能や安全性の評価を行います。さらに、北極航路利用の経済性も評価します。
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航行支援
砕氷船以外の船やタンカーは、北極海の海氷がある場所は航行できません。北極海の海氷分布について衛星観測データや分布予報の提供により、北極海の安全な航行支援に向けた研究を行っています。
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海洋における温室効果気体の
吸収・放出量推定
大気中の二酸化炭素は海洋にも吸収されますが、地球温暖化が進行するとその吸収能力が低下すると予測されています。海洋における二酸化炭素やメタンなど温室効果気体の吸収・放出を常に監視することが重要です。
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中央北極海漁業規制協定に関する情報提供
北極海中央部の公海部分で無規制に漁業が行われることがないように、北極海沿岸国、EU、日本など10の国と機関で「北極海公海における漁業規制に関する協定」を結んでいます。この協定について最新の情報を収集して提供します。
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観測拠点整備
北極域研究には、北極圏の調査観測によるデータ収集とその解析が不可欠です。スバールバル諸島のニーオルスン基地の他、北極圏国の研究機関と提携して運用・維持している観測施設を国際連携拠点として活用します。
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気象・海氷観測と予測
北極域現地での観測、砕氷船による観測、衛星を用いた観測で北極海の気象と海氷の観測を継続的に行い、北極域の気象予測や北極海の海氷分布予測の精度向上を目指しています。
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「みらい」とその他の船舶による観測
海洋地球研究船「みらい」や他の観測船により北極海を航海しながら海洋観測や気象観測を行います。観測航海を毎年行うことで、継続的なデータが蓄積されています。
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海洋観測
北極海の海洋観測では現在進行している北極海の環境変化を詳細にとらえるため、海水中の温度・塩分・化学成分の測定、プランクトンネット、海底の泥採取などで実際の海の様子を把握します。また海洋環境の変化をとらえるために観測装置を海水中に一定期間係留する観測も行われます。
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海洋生態系の調査
海氷の減少により海洋環境の変化や、それらがプランクトンから魚類、その捕食者であるクジラ、海鳥に至る生態系にどのように影響を及ぼすのかを調査します。
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氷河-海洋相互作用の解明
北極域の氷河氷床は近年急速に減少しており、その融け水が海に流入して海洋循環や生態系に変化をおこします。これらの実態解明のため、現地調査や衛星データを用いた研究を行っています。
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環境変化のリスク分析
氷河洪水および凍土融解などによる災害や海洋環境への影響を定量化し、北極域で起こる様々な環境変動への対応と将来的な災害リスクを明らかにします。
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地上観測
北極域の雪氷圏変動の実態把握と変動メカニズムの解明のため、雪氷微生物や光吸収性エアロゾルによるアルベドへの影響、積雪・雪質の観測を行います。
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陸域の生物多様性・生態調査
ツンドラ・森林において陸域の植物の生態系がどのように機能しているかに着目して実態把握を進めるため、新たな現場観測を推進するとともに長期の観測データやリモートセンシングデータも活用します。
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住民とのワークショップ
気候変動の影響を受ける北極域のコミュニティに研究成果を還元し、持続可能な北極域の将来に貢献するワークショップを開催します。
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アイスコア掘削・分析
長年の積雪が積み重なってできた氷床や氷河を長い柱状に掘り出すことをアイスコア掘削といいます。アイスコアの解析からは、地球上の様々な環境変動の現象を時系列データや空間分布データとして得ることができます。
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BC観測
ブラックカーボン(BC)粒子は化石燃料などを燃やしたときに発生する黒色の粒子です。森林火災によっても発生します。雪氷上に沈着すると雪や氷の融解を促進する可能性が指摘され、北極域の環境変動に大きく影響を与えていると考えられています。
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氷河氷床の変動と海への影響
北極域の氷河氷床は急速な温暖化の影響で縮小し、陸上の水循環や生態系に大きな変化を与えています。また氷の融け水は土砂と共に海へ流れ込み、海水面を上昇させる要因となります。氷河氷床の融解の仕組みとその実態を明らかにします。
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北極評議会(AC)等 北極関連会合への参加
北極域の様々なテーマについて議論する国際会議に専門家を派遣し、研究成果を提供しています。日本の北極域研究の成果は、国際的な各種報告書の作成などに貢献しています。
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人材育成・国際交流
海外の北極研究機関と研究交流を行うことで国際共同研究体制と国際的な人的ネットワークを構築し、研究力強化と若手研究者の育成を目指します。
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環境変化と人々の関わりについての
学際的なアプローチ
自然科学系と人文科学、社会科学系の研究者が協力して、環境変化の実態把握を行い、その結果を北極域のコミュニティに提供します。
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環境教材
北極域の現地観測や調査で得られた写真や情報を、研究成果と合わせて環境を考える教材として現地コミュニティに提供します。
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日本への遠隔影響・極端気象の予測
近年の日本でたびたび発生する豪雨や大雪なども、北極域の環境変化が影響していることが研究からわかってきました。北極域の環境変化が日本の気象に与える影響を研究し、冬の寒波や豪雪、夏の猛暑・大雨などの予測に役立てています。
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教育・アウトリーチ
北極域の気候や環境変化についてより多くの人に関心を持ってもらえるように、研究成果や最新の情報を分かりやすく伝える様々な教育・アウトリーチ活動を行います。
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人材育成、国際交流
将来の北極域研究を担う若手研究者の育成のため、若手研究者による自発的な研究の実施支援、緊急課題や挑戦的・萌芽的研究の機会提供、国内外の研究機関同士による研究交流プログラムの実施を推進しています。
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政府関係者への
北極政治・国際法に関する情報提供
北極評議会(Arctic Council)やその作業部会など北極域の様々な国際会議に出席している専門家と政府関係者による意見交換を行い、日本の北極政策策定に貢献します。
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データ保管・公開・共有
北極域研究や観測による多種多様なデータはデータベース化され、研究データの流通と研究者の利用促進のため、Webサービスを通じ広く公開されています。
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北極環境統合情報WEB、北極海氷情報室
「北極環境統合情報WEB」は国内外の最新の研究成果やニュースなど北極域に関する情報のポータルサイトを目指して運用中です。「北極海氷情報室」では北極海氷分布予報など北極海氷についての情報を専門に発信しています。
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大気-海洋-海氷相互作用の解明
地球温暖化に伴って海氷域が減少し、海洋と大気間の熱や水蒸気交換が活発になっています。これにより海洋の熱や水蒸気が大気循環にどのような変動をもたらし、また大気が海洋や海氷にどのような作用をするのかを解明します。
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寒気の吹き出し
冬型の “西高東低の気圧配置” では、西のシベリア高気圧が強くなると、日本を含む東アジアへの寒気吹き出しも強まります。さらに偏西風の蛇行によりシベリア高気圧が中緯度に張り出すと、日本に豪雪をもたらす一因となります。
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海氷
海氷は海水が凍ったもので、広く北極海を覆います。近年、夏の北極海氷面積は減少傾向が続いており、温暖化の影響として注目されています。海氷は、夏季には日射を反射して昇温を抑え、冬季には海水の熱が奪われるのを防ぐ働きがあり、極地の海の熱バランスに重要な影響を与えています。これが減ることにより急速な温暖化が起こり、さらに温暖化を加速する北極温暖化増幅をもたらします。
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氷河
寒冷地の山岳域に降り積もった雪が蓄積されて氷となり、ゆっくりと動くものを「氷河」と呼びます。たくさんの氷河を抱える北極域で今、地球で最も急速な気温上昇が起きています。氷河の融け水は、海水面の上昇や海の環境に影響を与えるだけでなく、洪水などを引き起こすこともあり、人々の生活圏に影響を与えます。
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氷床
グリーンランドと南極大陸を覆う氷は特に規模が大きく、「氷床」と言われています。氷床はそれ自体の重さで、氷全体が海に向かって、ゆっくりと動いています。グリーンランドの氷床質量は温暖化の影響で減少傾向にあり、融解水が海に流入することで海洋に影響を与えます。これらの変化は、グリーンランドに住む人々の暮らしにも影響を与えています。
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ツンドラ
ツンドラは、地面がいつも凍っていて雨が少ない土地のことで、北極域の陸地のほとんどを占めます。短い夏には表面が融け、コケ植物、地衣類、背の低い草花が育つところもあります。
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北極圏の動物
北極域にはホッキョクグマをはじめ、ホッキョクギツネやトナカイなど、寒冷な気候に適応した多くの種類の動物が暮らしています。海ではクジラ、アザラシ、セイウチ、イッカク、ベルーガなどが見られます。
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アルベド
太陽から光が入ってくるエネルギーと反射するエネルギーをアルベドといいます。地球は太陽からの放射エネルギーの約7割を吸収して3割を大気圏外に反射しているので、アルベドは30%です。地球の約7割を占める海の反射率はおおむね10%以下ですが、雪氷は30%から90%の高い反射率を持っているため、地球全体の反射率を高め、温暖化を抑止しています。
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雪氷アルベドフィードバック
温暖化が進み雪氷域が融解していくと、地球のアルベドが低下し、地球表面における太陽放射エネルギーの吸収が増加し、さらに温暖化が加速します。この現象を雪氷アルベドフィードバック(ice albedo feedback)といいます。温暖化抑止のためにも、北極域の雪氷分布状況の変化を見守る必要があるのです。
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北極海の波浪
夏の北極海の海氷の減少に伴い、船舶が航行できる北極航路の利用が進む一方で、その海域では風により生成される波浪(高い波)も年々増大していることがわかってきました。北極航路の波浪は航行する船舶にとって抵抗となるだけでなく、しぶきが凍り船に着氷することが大きな問題であり、その特性の把握と予測のための研究が進められています。
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森林火災
近年、北極圏に近い地域における夏季の熱波や森林火災が頻繁にニュースになります。森林火災により発生するエアロゾルは北極圏の大気に大きな影響を与え、環境変動の原因となることがわかっています。熱波・森林火災の予測研究が、北極域及び周辺域の大気汚染対策に貢献すると期待されています。
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海洋プラスチック
海洋プラスチック汚染の問題は北極も例外でなく、北極海の海水中からも多量のマイクロファイバー(合成繊維片)が見つかっています。北極の生態系にこのプラスチック汚染が与える影響を解明するために、「みらい」による北極調査航海では北極のプラスチック汚染に関する調査が2020年から行われています。
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