北極海、10月の海氷域面積が過去最小を記録

北極海を覆う海氷の面積は一年の間に変化し、毎年2月下旬から3月上旬ごろには最大、9月中旬ごろには最小になります。その面積は地球温暖化の影響を受けて年々減少傾向にあり、2020年9月には、1979年に衛星による海氷域の観測が始まって以降、史上2番目の年間最小値を記録しました(注1)。

9月下旬ごろから再び海は凍り始め、10月から11月にかけて海氷の面積は急激に増加していきます。国立極地研究所が運営している北極域データアーカイブシステム(ADS、注2)によると、今年10月の平均海氷域面積は505万平方キロメートルとなり、10月としては過去最小値を記録したことがわかりました(図1)。これまでの最小値であった2019年の548万平方キロメートルから、さらに日本の面積1つ分少ない値です。

図1:10月の北極海の平均海氷域面積の推移

10月の海氷域面積に影響を与える要因として、気温、海水温、風、海流、雲量、夏の海氷域面積、海氷の厚さなどがあります。これらの条件は毎年変化するので、海氷域の分布の傾向は一定ではありません。2019年と2020年の10月の海氷域分布を比較すると、2020年はよりロシア側の海氷が少なくなっていました(動画1)。この原因としては、今年は海氷の成長期にロシア北部の地上気温が高かったこと、夏に気温が上がり海氷が多く解けたこと、秋にロシア沿岸から北極点方向へ風が吹き海氷の融解が進んだことなど、複数の要因が考えられています。

動画1:2019年と2020年の北極海の海氷域分布の比較(3月〜10月の変化)
画面左側がユーラシア大陸、右側は北アメリカ大陸、画像中央の黒点は北極点を示す。(動画作成・ADS)

11月以降の海氷域面積はどう変化していくのでしょうか。再び年間最小値が更新される可能性はあるのでしょうか。これまでの観測結果を見ると、海氷域面積は確実に減少傾向にあるものの、年単位で見るとその増減の特徴は異なります(図2)。今年は世界中の異常な天候の要因となりうるラニーニャ現象(注3)も発生しています。

図2:北極海の海氷域面積の年間変動の推移
1980年代~2010年代の平均値(点線)と、年間最小値の歴代1~5位(実線)のデータを示す。

今後は、海氷や気象予測の研究者の方々にインタビューをおこない、今回の現象の分析や今後の予測について詳細を発信していく予定です。

北極域データアーカイブシステム(ADS)では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星「しずく」が観測したデータを基に算出した海氷域面積を、準リアルタイムで確認することができます。

注1:2020年9月23日・国立極地研究所プレスリリース「北極海の海氷面積が9月13日に年間最小値を記録 ~衛星観測史上2番目の小ささ~」
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20200923.html

注2:北極域データアーカイブシステム(ADS)
国立極地研究所が運営しているデータアーカイブシステム。北極域の研究を通して持続可能な社会の実現を目指す北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)の一環で運営されている。
https://ads.nipr.ac.jp/

注3:ラニーニャ現象
太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象。日本では、夏は猛暑、冬は厳寒になる傾向がある。