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北極関連トピックス解説

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北極関連国際会合への専門家派遣とArCS IIの貢献

*こちらの記事はArCS II News Letter No.3 (発行:2021年11月)に掲載されたものです。

ArCS II(北極域研究加速プロジェクト)は北極域研究活動の推進と並行して「北極域研究成果の戦略的情報発信」 をプロジェクトの重点課題としており、その一つとして「専門家派遣と政策決定者への情報提供と対話」に取り組んでいます。これは、北極域の諸問題に関する国際会合に日本から専門家を派遣してArCS IIにおける研究成果の提供を積極的に行うとともに、北極域をめぐる最新情報を収集し、政策決定者をはじめ日本国内の関係者へフィードバックすることを目指すものです。

北極域の諸問題に関する国際会合には、大きく分けて2つのグループがあります。1つは政府間組織のグループで、その代表は北極評議会(Arctic Council:AC)です。ACは北極圏の持続可能な開発や環境保護など北極圏国に 通の問題について協調・調和・交流をはかる組織で、日本はオブザーバー国として参加を認められています。ACでは6つの作業部会(Working Group:WG)を設けて専門家会合を開き、科学的アセスメントやガイドラインなどさまざまな文書・報告書を作成し公表しています。日本の北極研究者もこの作業部会の会合に参加し、研究活動発表や報告書作成に貢献しています。

もう1つは非政府間組織のグループで、研究や観測活動を支える科学的な会合や北極の理解を深める各種会合があります。日本の専門家は、国際北極科学委員会(International Arctic Science Committee:IASC)が開催する科学者の専門家会合から北極圏の産業や政治に関係する情報交換が行われる北極サークル(Arctic Circle)まで、広範囲に及ぶ国際会合に参加しています。

第1回 専門家派遣報告会開催

国際会合への専門家派遣によって得られた情報を国内の関係者に提供する機会として、報告会を開催しています。2021年9月6日には「第1回ArCS II専門家派遣報告会」をオンラインで開催し、文部科学省のほか北極域政策の関係省庁およびArCS IIプロジェクト関係者の32名が参加しました。

本報告会ではACの各作業部会に出席した研究者からの報告が行われ、作業部会の活動傾向や最新の動きについて情報が共有されました。特に、北極圏監視評価プログラム(Arctic Monitoring and Assessment Programme:AMAP)が2021年5月に5つの分野について政策決定者向け要約(サマリー)を発行し、ArCS IIの研究者がそれらの日本語翻訳版を作成・公表したことが報告されました。速いスピードで大きく変化している北極域の環境と人間社会への影響、抱える問題と対応すべき課題などが分かりやすくまとめられていること、そして特に注目すべきポイントについて、AMAPの会合に継続的に出席している研究者から解説を交えた紹介がありました。

ArCS IIでは今後も専門家派遣により、北極域における日本の国際的なプレゼンスの向上と北極政策の策定に貢献していきます。

AMAPによる政策決定者向け要約版

AMAP(Arctic Monitoring and Assessment Programme:北極圏監視評価プログラム)は北極評議会(Arctic Council:AC)の作業部会の1つであり、1991年の設立以来、北極域の汚染や気候変化の問題について監視を行い、その状態を評価してきました。2021年5月20日、AMAPは北極域の現状と最新の科学的知見をもとに5つの分野について要約を発行し、関連分野の政策決定者に向けて推奨事項を打ち出しました。

AMAPが発行した政策決定者向け要約の1つ『Arctic Climate Change Update 2021』日本語翻訳版表紙

AMAPの活動と今何に向けて動きだすべきかを分かりやすく伝えるため、ArCS IIでは、各要約の分野(気候変化、水銀・残留性有機汚染物質、大気汚染物質、人々の健康)の専門家が監修して日本語翻訳版を作成しました。AMAPのウェブサイトのPUBLICATIONS(出版物)のページ に、各要約の英語版と日本語翻訳版が並んで掲載されています。