2024年拡大期予報
2024.09.27 北極海氷情報室、木村詞明(東京大学大気海洋研究所)
- ロシア側で平年より早いペース、カナダ側で平年より遅いペースで海氷域が拡大する見込みです。
- 多島海を除くカナダ沿岸は11月3日頃に海氷域が沿岸に達し、航路が閉じるでしょう。
北極海の海氷域は9月中旬に最小となり、その後、拡大をはじめました。 今後については、図3に示す通り、夏に例年よりも大きく海氷が後退したボーフォート海にかけての海域では海氷域の拡大が平年に比べて遅くなることが見込まれます。 また、カラ海、ラプテフ海、東シベリア海、チュクチ海については平年より早く海氷域が広がることが見込まれます。 海氷域が岸に達し航路が閉じるのは、多島海を除くカナダ沿岸で11月3日頃になる見込みです。 ロシア側はウランゲリ島周辺で海氷が残ったため今年は開通しませんでした。
今回の予測は第三報と同様の手法により、2003年から2023年までの21年間のデータを用いて、
9月13日から9月22日までの海氷密接度と10月1日以降の日の海氷密接度との相関関係を用いて行いました。
詳しい手法に関しては2024年第三報補足をご参照ください。
今年の夏場はウランゲリ島周辺で海氷が残りましたが、これは2003年から2023年の間にはなかった現象です。
そのため、過去のデータをもとに予測する本手法ではウランゲリ島周辺に残った海氷が予測できていないことに注意してください。
この予測には人工衛星搭載の国産マイクロ波放射計AMSR-EおよびAMSR2による観測データを用いました。
毎日の 予測図 及び 海氷齢(日齢、年齢)は国立極地研究所の北極域データアーカイブシステムでも見ることができます。
北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は海氷情報室(
)までお問い合わせください。
この予測およびその基礎となる研究は、GRENE北極気候変動研究事業から始まり、北極域研究推進プロジェクトに引き継がれ、2020年度からは北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)で実施しています。