笠松 伸江
(平成17年3月修了)
国立極地研究所・生物圏研究グループ・助手

極域科学専攻在籍時の研究活動

南極海における硫化ジメチル(DMS)動態の解明を目的に研究を行っていました。DMSは、海洋中の生物活動を通して生成する物質で、地球規模の気候変動に影響を与えると考えられています。在籍中は、実験室において植物プランクトンの培養実験を繰り返し、また、南極海航海に数多く参加し、その結果を学位論文「Biological control of dimethylsulfoniopropionate and dimethylsulfide production in the Southern Ocean」としてまとめました。実験室での培養実験と現場観測、生物学的なプロセスと化学的なプロセスを組み合わせて考察していることが私の研究の最大の特徴でした。

在籍中のフィールドワーク参加歴

博士課程1年1~2月
東京水産大学「海鷹丸」による南大洋インド洋セクターの生態系と温暖化関連物質の調査

博士課程1年2~3月
第44次日本南極地域観測隊専用観測船「タンガロア号」による南極海調査(季節海氷域の光合成に始まる物質循環の解明)

博士課程2年1~2月
海洋科学技術センター「みらい」による南大洋調査(海洋の化学環境変化の把握に係る研究)

博士課程3年12~1月
東京海洋大学「海鷹丸」による昭和基地沖(リュツォ・ホルム湾沖)の生態系と温暖化関連物質の調査

現在の研究活動

引き続き海洋における硫化ジメチルの動態について研究を行っています。これまでの研究の結果から、硫化ジメチルの生成過程は、昭和基地沖(東経40度)とデュモン・デュルビル沖(東経140度)で異なることがわかりました。その要因について、植物プランクトンや動物プランクトンの生態を考慮しながらデータ解析・論文作成を行っています。また、定着氷域における硫化ジメチルの動態を明らかにするための観測の準備を行っています。氷の中に閉じこめられた水(ブライン)に棲息する植物プランクトン(アイスアルジー)や定着氷域上空の大気中の硫黄化合物について観測する予定です。

極域科学専攻を目指す学生へ一言

日本から遠く離れた極地を自身で体験し、自然に直接触れ、そこから何が大切かを読みとり、読みとった何かを多くの人々に公表するのは、非常におもしろいことです。周りの人たちに支えられながら、たくさんのワクワク、ドキドキを体験してください。