髙橋 啓伍
(令和元年4月入学)

極域科学専攻を志望した理由

進学前は、南極海での海氷融解と海氷に含まれる藻類の放出をテーマに研究していました。修士までに考えていた仮説を検証するため、3年次編入で進学しました。「しらせ」による秋季の観測を実施することに加え、衛星データから広域で仮説を検証したいという動機がありました。

現在の研究活動

季節海氷域(海氷の成長と消失が、一年のサイクルで起こるエリア)では、春—夏に海氷近くで植物プランクトンの大増殖が見られます。海氷が融けることで海氷中の物質(栄養分となる鉄や藻類)が放出され、増殖に適した環境が生じます。植物プランクトンの分布・現存量は南極海の基礎生産量(光合成による有機物生産)や生態系に波及する重要な要素です。しかしこれらは海域ごとに大きく異なり、現状のメカニズムではその不均一な植物プランクトンの分布を説明出来ていません。
私は海氷がもたらす物質の量・組成の違いが、海氷融解後の植物プランクトンの生産・現存量に寄与すると予想し、両者の関係を船上観測と衛星データから調べています。海氷が海水から効率良く物質を閉じ込めるには、海氷が生成される物理環境も重要と考えて、2020年3月に「しらせ」で行った観測データの分析も進めています。

極域科学専攻を目指す学生へ一言

研究は地道な作業の連続で、成果として残すには時間がかかります。専攻に進んでから獲得したい経験、知識や技術を予め心に留めておくと良いと思います。