富山 隆將
(平成16年3月修了)
海洋研究開発機構 高知コア研究所 科学支援グループ・技術副主任

極域科学専攻在籍時の研究活動

太陽系内の惑星物質としては最も古く未分化である、コンドライトと呼ばれる一群の石質隕石は、母天体上に集積し岩石として固化した後に、ときに~900°Cに達する熱変成や、数十Gpaに達する衝撃変成などの二次的過程を経験したことが知られている。本専攻在籍時の研究活動においては、特にLコンドライトと呼ばれるグループの隕石について、岩石・鉱物学的研究と年代学的研究を行った。X線マイクロアナライザで得た鉱物の化学組成をもとに、地質学的温度計・冷却速度計を適用し、試料の受けた熱履歴を明らかにすることで、母天体の熱構造を議論したほか、高分解能二次イオン質量分析器SHRIMP IIを用い、太陽系のごく初期にのみ存在した短半減期核種53Mnの崩壊系列を用いた年代測定法を実用化し、Lコンドライトの熱変成のタイムスケールに制約を加えた。

現在の研究活動

パラサイトと呼ばれる、粗粒のケイ酸塩鉱物と鉄ニッケル合金の基質からなる石鉄隕石について、ケイ酸塩鉱物中にみられる微量元素の分布の測定や、短半減期核種53Mnや26Alによる年代学的研究を基にして、母天体上での熱史を研究している。パラサイトは、原始太陽系において溶融・分化過程を経験した母天体の深部、金属核とマントルの境界付近で形成され、数千万年から数億年かけて冷却されたものと考えられているが、パラサイトの岩石組織や鉱物化学組成から推測される冷却速度は、ときに母天体深部では有りえないほど速く見積もられる場合がある。得られたデータを定量的に評価するため、鉱物中の微量元素の拡散過程をシミュレーションする処理系なども開発した。

極域科学専攻を目指す学生へ一言

博士前期(修士)課程、博士後期課程と進むにしたがって、研究発表の機会や、他の研究者・研究機関との交流が増え、自分はずっと変わらないつもりでも、研究活動を行う舞台は、どんどん大きくなって行きます。どこに出ても右往左往しないふてぶてしさと、チャンスを見つけて挑んでいく積極性を持つことが大事です。