海洋地球研究船「みらい」と第一期水循環変動観測衛星
「しずく」との連携協力による北極海の調査・観測の実施

掲載日:2012年10月1日

宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」)は、海洋研究開発機構(以下、「JAMSTEC」)と、地球環境分野における観測衛星データと海洋に展開する観測システムから得られる現場データとの融合等海洋と宇宙の連携を進めているところです。

このたび、情報・システム研究機構国立極地研究所(以下、「国立極地研究所」)は、GRENE北極気候変動研究事業として、9月3日から10月17日までの間、JAMSTEC所有の「みらい」を用いて、急激に海氷が減少した北極海での環境変動による生態系や気候変動システムへの影響を詳しく調査しています。JAXAは、この北極海の観測・調査航海において北極海の観測研究や安全な航行のために、「しずく」の北極海域の観測データの提供を開始しました。

「みらい」の北極観測航海には、日々変化する海氷の状況を知ることが必要ですが、今回の航海では、天候に左右されず観測できる「しずく」の海氷分布、海水温分布、海氷密接度等海氷に関するデータを1日3回、「みらい」に提供しており、最適な航路や観測海域選定の判断情報として利用されています。
「しずく」の高分解能データと即時提供される海氷情報を得ることで、詳細な海氷の状況を把握し、「みらい」の航行時間のロスの軽減、効率的な航海計画の立案、氷縁域や航海期間中のごく短期間しか開水域にならない海域での観測活動、「みらい」が海氷に閉じ込められるリスクの回避等に役立てます。

また、今回の「みらい」の観測・調査によって得られた海表面温度等北極海域に関するデータは、JAXAにも提供され、「しずく」の観測データの精度検証に利用されるとともに、近年、減少を続けている北極海氷の解析など北極域の環境変動研究にも役立てられます。

「しずく」から「みらい」へ提供している
北極海域の観測データ(2012年9月16日)

(左下)2012年9月16日深夜に「みらい」が遭遇した海氷のレーダー像、(右上)海氷域を抜けた2012年9月20日に「みらい」から撮影した北極海の状況
(写真提供:国立極地研究所・海洋研究開発機構)

<図の説明>
左の図は、JAXAが「みらい」に提供している「しずく」の観測画像に「みらい」の計画航路を重ねて表示したものを示しています。「みらい」は、2012年9月16日深夜、航路No.22から23にかけて航行中に、海氷が散在する海域に遭遇した。その時のレーダー像を右側図の左下に示している。その後、「みらい」は海氷域を抜け、9月20日現在No.36付近の海域を航行中。今年は北極海の海氷面積が観測史上最小となったこともあり、当該海域には海氷が存在していないことが現場の写真からも確認できる。

「みらい」北極海調査・観測航海概要

○航海期間
  9月3日(月)青森県関根浜港出港 ~ 北極海 ~ 10月17日(水)関根浜港帰港

○観測実施区域
 海氷減少に伴う変化が現われはじめている太平洋側北極海のチャクチ海陸域棚から陸域斜面域・カナダ海盆での観測データの取得を海氷最小期に実施します。

○航海中の観測の様子は、GRENE北極変動研究事業HP「北極から~2012観測便り~」で公開しています。


「みらい」の航路計画(画像提供:国立極地研究所・海洋研究開発機構)

「みらい」北極海調査・観測航海概要

文部科学省の大学発グリーン・イノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス」(GRENE)事業 北極気候変動分野で国立極地研究所が代表機関、海洋研究開発機構が参画機関として採択されたのが「急変する北極気候システム及びその全球的な影響の総合的解明」(北極気候変動研究事業)です。4つの戦略研究目標達成を目指し9つの課題を採択し、平成23年度から平成27年度まで事業を実施します。

本事業についての概要および「みらい」からの観測便りはホームページをご参照下さい。

第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)
画像提供:宇宙航空研究開発機構

海洋地球研究船「みらい」
写真提供:海洋研究開発機構

JAXAのページ (http://www.jaxa.jp/press/2012/10/20121001_mirai_shizuku_j.html