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地球惑星科学連合大会ハイライト論文に選定:地球の磁場逆転は従来説より1万年以上遅かった ー 火山灰層の超微量・高精度分析により判明

2014年4月28日

地圏研究グループの菅沼悠介助教、堀江憲路助教、海田博司助教らは、地層中の火山灰層に含まれるウラン(U)と鉛(Pb)の存在比を超微量・高精度で分析し、最後の地球の磁場逆転が約76万年前に起こったことを、これまでよりも信頼度の高い方法で決定しました。これは定説とされてきた年代より少なくとも約1万年遅い値です。この成果は、4月28日から開催される日本地球惑星科学連合(JpGU)2014年大会で発表されます。なお、特に学術的・社会的に話題性が高い発表であるとして、大会ハイライト論文のひとつに選ばれています。

地球を大きな磁石に見立てたときのN極とS極の向きは、過去に何度か逆転が起こっていたことが知られています。最後に逆転が起こった時期の地層は「ブルン-松山境界」と呼ばれ、その年代はこれまで、約78万年前とされていました。

年代の決定には主に、火山岩層に含まれるアルゴン(Ar)の分析結果が用いられていました。しかし、基準試料におけるArの測定値と年代との対応に複数の見解があったことなどから、一部の研究者の間ではその正確さに疑問がもたれていました。また、海底堆積物や南極氷床コアなど、他の方法で決定された年代とのずれも指摘されていました。

本研究で菅沼助教らは、千葉県市原市の「百尾(びゃくび)テフラ」と呼ばれるブルン-松山境界付近の火山灰層からジルコン粒を取り出し、含まれるUとPbの存在比を測定しました。その測定結果から、地球磁場極性の逆転が、これまでの定説より誤差を含めても約1万年以上遅い約76万年前であることが分かりました。この年代は、海底堆積物や南極氷床コアの分析から求められた年代とも整合性がありました。

この方法では、基準試料の年代値がより正確に決められているU-Pb壊変系を用いることで、より信頼度の高い年代決定を可能としました。また、ジルコン中のごく微量のUとPbの測定には、極地研の所有する高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMPⅡ)が用いられました。

ブルン-松山の地球磁場逆転は、他の地層の年代決定の基準にもなっており、今後この成果によって、さまざまな地層の年代が書き換わる可能性があります。

発表タイトル

SGL44-03「白尾テフラの単結晶ジルコンSHRIMP U-Pb年代を用いたB-M境界年代地の高精度決定」

著者

菅沼悠介(1)、岡田誠(2)、堀江憲路(1)、海田博司(1)
竹原真美(3)、仙田量子(4)、木村純一(4 )、風岡修(5)

1: 国立極地研究所、2: 茨城大学、3: 九州大学、4: 海洋研究開発機構、5: 千葉県環境研究所

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