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[プレスリリース]2014年夏季の北極海海氷分布予報を公開

2014年5月30日

情報・システム研究機構国立極地研究所(所長:白石和行)が代表機関を務めるGRENE北極気候変動研究事業の、山口 一(やまぐち・はじめ)東京大学教授らの研究グループが、5月30日、2014年夏季の北極海の海氷分布予報を公開します。

海氷分布予報によると今夏の北極海の海氷面積は昨年よりも縮小し、過去最低面積を記録した2012年に次ぐ小ささとなることが予想されます。

また、ロシア側の北東航路では8月11日頃、カナダ側の北極海沿岸では7月26日頃に航路が開通すると見込まれます。

1.概要

2014年7月1日から9月16日までの北極海の夏季海氷分布について、5月30日からWEB上で予報を公開します。

本予報は、GRENE北極気候変動研究事業の戦略研究目標④「北極海航路の利用可能性評価につながる海氷分布の将来予測」(研究代表者:島田浩二/東京海洋大学 准教授)の研究サブ課題「北極航路利用のための海氷予測および航行支援システムの構築」(研究サブ課題代表者:山口一/東京大学 教授)の研究チームによるもので、今後も8月までの毎月末に更新していく予定です。

公開WEB  http://www.1.k.u-tokyo.ac.jp/YKWP/2014arctic.html
東京大学山口一研究室ホームページ  http://www.1.k.u-tokyo.ac.jp/

2.今夏の予報

今夏の北極海の海氷面積は昨年より減少し、観測史上最小だった2012年に次ぐ小ささになることが予想されます。また、ロシア側の北東航路では8月11日頃、カナダ側の北西航路では7月26日頃に開水面域がつながり航路が開通すると見込まれます。

昨年(2013年)の冬から今年の春にかけて、北極海のロシア側では、ラプテフ海で多くの海氷が流出し、東シベリア海には海氷が収束する傾向がありました。このためラプテフ海では春季の海氷が薄く、海氷域の後退が早く進行する見込みですが、東シベリア海の海氷後退は例年よりも遅れることが予想されます。

一方、カナダ側海域では冬季に海氷が沿岸から離れていたことから、沿岸付近は比較的薄い海氷に覆われていると考えられます。そのため6月から7月にかけて海氷域が急速に後退し、7月中に開水面域がつながる見込みです。

図:今夏の最小期(9月11日)の予測海氷分布図。色が海氷密接度(被服率)を示す。単位は%。

3.予測手法

本予測では、過去11年間(2003年~2014年、衛星観測の途切れた2012年を除く)のJAXAの衛星搭載マイクロ波放射計AMSR-E(地球観測衛星「Aqua」に搭載)およびAMSR2(第一期水循環変動観測衛星「しずく」に搭載)のデータを用いています。これらのデータから独自の計算により北極海全域での毎日の海氷の動きを計算し、それをもとに12月から4月にかけての海氷の収束と発散を解析しました。

本予測は、海氷が流出する(発散する)海域では薄い海氷の割合が増えて5月以降に海氷が融解しやすく(例年よりも早く海氷が無く)なり、逆に海氷が集まる場所では海氷が厚くなるため海氷の融解が遅くなるという考えをもとにしています。実際、昨年までのデータを用いた解析から、冬季の海氷の収束・発散が夏の海氷分布と関係していることが分かりました。

なお、同チームは、2010年より上記手法に改良を加えながら毎夏の北極海の海氷分布予報を公開・検証してきました。

4.今後の展望

海氷域の後退に伴い北極海を貨物船の航路として利用することが現実味を帯びてきています。北極海を航路として利用することが可能になれば、日本をはじめとする東アジアから欧州までの航路を大幅に短縮できます。この予報は北極航路の航行支援を想定したものであり、夏季の海氷分布を春の時点で予測することにより、安全で効率的な航行に寄与することを目指しています。

GRENE北極気候変動研究事業

文部科学省は、大学発グリーン・イノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス」(GRENE)事業 北極気候変動分野で「急変する北極気候システム及びその全球的な影響の総合的解明」(北極気候変動研究事業)を推進しています。本事業は2011年度からの5年間の事業で、国立極地研究所が代表機関、海洋研究開発機構が参画機関として採択されています。4つの戦略研究目標達成を目指し9つの課題を採択し、国内39機関、約300名の研究者の参加のもと平成23年度から平成27年度まで事業を実施します。

本事業についての概要はホームページをご参照下さい。
http://www.nipr.ac.jp/grene/

5.本件お問い合わせ先

報道に関して

国立極地研究所 広報室 小濱 広美
TEL:042-512-0655
E-mail:kofositu@nipr.ac.jp

研究内容に関して

国立極地研究所 北極観測センター・特任研究員(東京大学大学院新領域創成科学研究科・客員共同研究員) 木村 詞明
TEL:04-7136-4122
E-mail:kimura@1.k.u-tokyo.ac.jp

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻・教授 山口 一 
TEL:04-7136-4114
E-mail:h-yama@k.u-tokyo.ac.jp

GRENE北極気候変動研究事業に関して

国立極地研究所 北極観測センタ― 熊谷 宏靖/上曽 由紀江
TEL:042-512-0922
E-mail:grene-kikaku@nipr.ac.jp

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