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トピックス

北極科学サミット週間2015(ASSW2015)開催報告

2015年7月14日

1. 開催期間

2015年4月23日(木)~4月30日(木) 8日間

  • 4月23日(木)~ 26日(日) IASC関連会合
  • 4月26日(日) 公開講演会
  • 4月27日(月)~ 30日(木)
    科学シンポジウム
    第4回国際北極研究シンポジウム(ISAR-4)
    第3回国際北極科学計画会議(ICARPⅢ)

2. 開催場所

富山国際会議場、富山市民プラザ、ANAクラウンプラザホテル富山

3. 開催名義

  • 名誉総裁:高円宮妃殿下
  • 主催:国際北極科学委員会(IASC) 共同主催:日本学術会議
  • 共催:国立極地研究所、北海道大学、海洋研究開発機構、北極環境研究コンソー シアム
  • 後援:
    文部科学省、外務省、宇宙航空研究開発機構、東北大学、富山大学、筑波大学計算科学研究センター、東京大学大学院新領域創生科学研究科、 富山県、富山県教育委員会、富山市、公益財団法人 立山カルデラ砂防博物館、公益財団法人 日本教育公務員弘済会富山支部

4. 参加者数・国数

  • 参加者数:708名(過去最多)
  • 国数(地域含む):26の国と地域
  • 国別参加者数
    日本:274、米国:77、ノルウェー:46、ドイツ:41、韓国:35、カナダ:35、ロ シア:29、ポーランド:24、英国:23、スウェーデン:23、フィンランド:19、中国:14、フランス:9、デンマーク:8、アイスランド:8、オランダ:6、スペイ ン:6、オーストリア:5、インド:4、チェコ:4、イタリア:4、スイス:4、グリーンランド:4、ニュージーランド:2、ベルギー:2、ポルトガル:2
富山国際会議場 メインホール
レセプション

5. ビジネス会合

(1)IASC関連会合

ASSW2015(2015年4月23日~30日、富山市)の前半(23-26日)には、国際北極科学委員会(IASC)関連の諸会合、およびパートナー団体の会合等が行われた。年1回のASSWに合わせて会合を持つ団体が多く、様々な重要な決定が為される。IASC関連会合としては、評議会会合、分野別5ワーキンググループ会合、ロシア北極に関する国際研究イニシアチブ(ISIRA)があり、パートナー団体会合としては極域若手研究者協会(APECS)、太平洋北極グループ(PAG)、 北極研究責任者フォーラム(FARO)、ヨーロッパ極域評議会(EPB)等がある。これらの会合は合わせて13件あった。 詳しい情報はこちらをご覧ください。

(2)サイドミーティング

北極研究をリードする研究者が世界中から多数集まるこの機会を利用して、別途設定した集会をサイドミーティングと呼ぶ。今回は国際北極変化研究委員会(ISAC)/北極観測サミット(AOS)と連携したPaSCAS(Partnership between the Scientific Community and Arctic Stakeholders : Responding to Change Workshop for the Arctic Observing Summit (AOS) 2016)、欧州連合の雪氷・気候・経済の変動に関する北極研究プロジェクト(ICE-ARC)、日本の北極域研究推進プロジェクト(ArCS)や米国海軍研究所(ONR)のプロジェクト等との連携を模索したEU-J-USワークショップ等、17件のサイドミーティングが開かれた。

6. 科学シンポジウムISAR-4 / ICARPⅢ

(1)科学シンポジウムISAR-4 / ICARPⅢ開会式

オープニングセッション

4月27日午前、富山国際会議場メインホールでASSW2015の名誉総裁に就任された高円宮妃殿下ご臨席のもと、科学シンポジウムISAR-4 / ICARPⅢの開会式が開催された。主催者側から、白石和行ASSW2015組織委員長、Susan Barr IASC議長、大西隆 日本学術会議会長が挨拶をし、その後、高円宮妃殿下からお言葉を賜り、来賓の藤井基之 文部科学省副大臣、宇都隆史 外務大臣政務官、伊藤忠彦 北極フロンティア議員連盟事務局次長、石井隆一 富山県知事から御挨拶をいただいた。開会式に引き続いてChristopher Rapley教授(ロンドン大学)による特別講演“Bridging the Gap Connecting Arctic Science and Global Action”と、IASC設立25周年セレモニーとしてIASC運営の功績者らによる“IASC History Panel”が開催された。

(2)ISAR-4 / ICARPPⅢセッション

A1セッション

ISAR-4/ICARPⅢ科学シンポジウムのセッションの公募に58件の応募があり、それを27のセッションにまとめた。セッションは研究成果を議論するISARタイプのセッション、主にこの10年間の研究計画を話し合うICARPタイプのセッション、そしてその両方を発表議論する混合セッションに分けた。最終的な発表件数は、合計511件(口頭発表が340件、ポスター発表が177件)であった。

このセッションの一つに、GRENE北極気候変動研究事業に関連するセッション“Understanding the Arctic climate change and its global influence: Japan's contributions and suggestions for the future”が開催された。口頭11件、ポスター24件の発表があり、これまでの成果が発表、議論された。また、山内恭プロジェクトマネージャーの基調講演やその他のセッション、サイドミーティング(PaSCAS、EU-J-US WS)でもその成果の紹介がなされたほか、わが国の北極での研究活動を紹介するパネル展示でも大きくとりあげた。

(3)基調講演

基調講演(メインホール)

富山国際会議場メインホールにおいて、28日から30日の3日間にわたり、毎日2件の基調講演を行った。

-4月28日
演題①: “A mid-latitude approach towards a sustainable Arctic of the planet Earth” 
演者:Huigen Yang, Director of Polar research Institute of China
演題②:“Current Status and Selected Outcomes of the GRENE Arctic Climate Change Research Project - Rapid Change of the Arctic Climate System and its Global Influences” by Takashi Yamanouchi, Kumiko Takata, Hiroyuki Enomoto and Yoshiyuki Fujii. 
演者:Takashi Yamanouchi, Project Manager of GRENE-Arctic project of Japan, National Institute of Polar Research

-4月29日
演題①:"Where do we go from here?" by Margareta Johansson, Terry Callaghan on behalf of our INTERACT Friends、
演者:Margareta Johansson, Lund University
演題②: "The position of indigenous knowledge on the roadmap for future Arctic research" 、演者:Gunn-Britt Retter, Saami Council

-4月30日
演題①: “Marine Ecosystem Responses to Ongoing Environmental Changes in the Arctic"
演者:Jacqueline Grebmeier, IASC Medalist, University of Maryland
演題②: "Arctic research as a tool for policy and business" 、
演者:Hannu Halinen, Arctic Ambassador of Finland

(4)ポスター賞

Susan Barr氏(IASC議長)と
受賞者の吉澤枝里氏(東京海洋大)

ポスター発表を行った学生および学位取得後5年以内の若手研究者を対象にポスター賞(Young Scientists Best Poster Award)を設けた。審査はISAR-4のScience Steering Committeeのメンバーが行い、30日の閉会式で金賞1名、銀賞2名の受賞者を発表した。受賞者には賞状が授与され、かつ、2017年にプラハで開催される予定のASSW2017の参加登録料が免除される。受賞者は以下の通り。

金賞(Gold)
・Mr. Rigen Shimada (千葉大学・島田利元)
B10-P06 “Temporal and spatial variations in dark ice surface on Greenland ice sheet derived from MODIS satellite image”

銀賞(Silver)
・Ms. Eri Yoshizawa (東京海洋大学・吉澤枝里)
B07-P12 “Delayed response of the oceanic Beaufort Gyre to wind sea ice motion: Influences on recent sea ice reduction in the Pacific sector of the Arctic Ocean”
・Mr. Nikolas Sellheim (University of Lapland)
C08-P03 “Morality, practice and economy in a commercial seal hunting community in Canada”

共同声明( TOYAMA CONFERENCE STATEMENT)はICARPⅢ Steering Group(議長David Hik)のメンバーが中心となって起草され、ISAR-4のScience Steering Committeeにより承認され、科学シンポジウムISAR-4/ICARPⅢ閉会式で発表された。
概要は次の通り。「共同声明は、急速に変化する北極に対し、持続可能な発展のために、分野・立場を越えた取り組みの姿勢や国際的な北極研究の方向性が示された。」また、和訳の抜粋は以下の通り。

  • 北極の変化は急速で、予測のための理解や適時な科学的知見の提供が十分にできていない。
  • 政策決定者や一般の人々は、北極の変化に対してより強い危機感を持つべきであり、地球全体に対して持つ重要性に気づくべきである。
  • 北極の変化に対応するには持続的な観測と、局所的・地域的・全球的なプロセスのより良い理解が欠かせない。
  • 北極の急速な変化についての研究活動においては、学問分野、空間スケールの違い、あるいは様々な知識体系を越えた連携に取り組まなければならない。
  • 北極の生態系、環境、社会の脆弱性および回復力を理解するには、非北極圏国からの参加を含む科学的な国際協力の強化が必要である。
  • 研究の優先順位の決定、あるいは研究計画のデザインや実行に北方の先住民コミュニティが参加する必要がある。
  • 教育と市民参加を通じ、先住民、科学者、政策決定者を含む北極の人々の間で観測・研究を長期的に支える仕組みを作り上げることが不可欠である。
  • 北極コミュニティの回復力を高め、持続可能な発展のためには、科学者、コミュニティ、政府、産業界を巻き込んだ共同アプローチが必要である。
(6)科学シンポジウムISAR-4 / ICARPⅢ閉会式

白石ASSW2015組織委員長から
HinzmanASSW2016組織委員長へのたすき渡し

4月30日に富山国際会議場メインホールで末吉哲雄組織委員会委員の司会で科学シンポジウム閉会式が行われた。Susan Barr IASC議長によるASSW2015の全体のまとめ、杉本敦子ISAR-4議長によるISAR-4のまとめの挨拶、David Hik ICARPⅢ議長による“TOYAMA CONFERENCE STATEMENT”及びポスター賞の発表があった。続いて白石和行ASSW2015組織委員長からLarry Hinzman ASSW2016組織委員長へASSW開催国の引継ぎを象徴する「たすき渡し」があり、Hinzman氏によるASSW2016の紹介が行われた。最後に白石委員長が運営に携わった事務局員や協力者を紹介して労をねぎらった後、閉会の宣言をした。参加者数は約300人であった。

7. 公開講演会「富山に北極がやって来た!」

4月26日(日)に公開講演会「富山に北極がやって来た!」を開催し、富山県と近隣県から約500名が参加した。第1部はSusan Barr氏(IASC 議長/極域歴史家)による北極探検の紹介、赤祖父俊一氏(地球物理学者)によるオーロラと北極圏の話、石川直樹氏(写真家)による自身の富山から極地までの旅の紹介があった。第2部はプレイベ ントとして行った北極科学アイディアコンテスト※1及び、おもてなしキャッチコピー※2の受賞者を壇上に招き、Susan Barr氏から賞状と賞品が手渡された。第3部は司会・進行の篠原ともえ氏(タレント)、石川直樹氏、飯田 肇氏(立山カルデラ砂防博物館・ 学芸課長)、杉山 慎氏(北海道大学低温科学研究所・准教授)、舘山 一孝氏(北見工業大学・准教授)によるパネルディスカッションを行い、立山で発見された氷河からグリーンランドや極地での生活等についての紹介があった。


Susan Barr氏による講演

パネルディスカッション

※1:北極についての関心を深めていただくことを目的として、北極に行ったら何をしたいか、夢のある科学的アイディアを小学生を対象に募集。(募集期間2014年11月10日〜2015年1月16日、応募総数264件、入賞48件。)
※2:富山県のみなさまに「ASSW2015」を知っていただくこと、そして、海外・県外から大勢、来県される北極研究者のみなさんを歓迎する気持ちを表していただくために小中学生を対象に募集した。大賞作品はポスター等に採用した。(募集期間2014年11月10日~12月19日、応募総数326件、入賞4件。)

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