大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

国立極地研究所ホーム>研究成果・トピックス

トピックス

地圏研究グループ 竹原真美特任研究員らの論文がIsland Arc誌のTop20ダウンロードに

2018年8月28日

地圏研究グループの竹原真美特任研究員らによる論文が、日本地質学会の発行する英文論文誌Island Arcのダウンロード数Top20に入りました。これは、Island Arc誌に2016年から2017年に掲載された論文のなかで、論文のダウンロード件数が上位20以内であったというものです。

本論文では愛媛県の石鎚カルデラに分布する火成岩から採取したジルコン(ZrSiO4)に対して、極地研所有の高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP IIe)を用い、超高精度の年代分析を行いました。その結果、石鎚カルデラを形成したマグマ溜りの進化過程には3つの冷却ステージが存在(図1)し、石鎚カルデラが約60万年をかけて形成されたことが明らかになりました。本成果は、カルデラ型の火山が大規模噴火後にこれまで予想されていたよりも緩やかに冷却していることを示しており、このことは、今後、同型の火山の噴火予知・観測にとっても重要な情報です。

さらに、世界で初めて、火成岩中に含まれるzircon antecryst(早期晶出ジルコン)の粒子形態及び表面状態の観察に成功しました(図2)。ジルコンは、マグマの冷却段階において、ジルコニウム(Zr)の飽和に伴い晶出します。ジルコンを晶出したマグマは、Zrに枯渇します(未飽和状態)が、マグマの冷却が進めば、再びZrに飽和しジルコンの晶出が始まります。今回発見したzircon antecrystは角のとれた、比較的丸みを帯びた形状をしています。これはマグマ溜り内で早期に晶出したジルコンが岩石(火成岩)に取り込まれることなく、長期間マグマ溜りにとどまったため、Zrに枯渇したマグマ中で一部が溶け出したことを意味しています。石鎚カルデラ形成の最終ステージで噴出した番匠谷流紋岩中から発見されたzircon antecrystの年代・化学的特徴は、ステージ1で噴出した天狗岳火砕流堆積物中のジルコンの年代・化学的特徴と一致しています。このことは、番匠谷流紋岩中のzircon antecrystがステージ1で晶出し、その後60万年間マグマ溜りに滞留していたことを示しています。

掲載誌:Island Arc
タイトル:Timescale of magma chamber processes revealed by U-Pb ages, trace element contents and morphology of zircons from the Ishizuchi caldera, Southwest Japan Arc
著者:竹原真美、堀江憲路(極地研)、谷健一郎(国立科学博物館)、吉田武義(東北大学)、外田智千(極地研)、清川昌一(九州大学)
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/iar.12182

図1:石鎚カルデラのマグマ溜りの進化と時間スケール。石鎚カルデラに分布する火成岩中のジルコンのSHRIMP分析結果(Hf存在度、希土類元素(REE)パターン、U-Pb年代)及びジルコン粒子の形態と岩石薄片の観察等に基づき、マグマ溜りの進化過程において3つのステージを識別した。各ステージのジルコンU-Pb年代が1480万年前、1455万年前、1421万年前を示すことから、石鎚カルデラの形成のタイムスケールは約60万年である。

図2:石鎚カルデラに分布する火成岩に含まれるジルコン粒子の走査型電子顕微鏡像(後方散乱電子像)。(a)天狗岳火砕流堆積物、(b)想思渓花崗閃緑岩、(c)鉄砲石川石英モンゾニ岩、(d)天柱石流紋岩、(e)番匠谷流紋岩中のzircon antecryst(早期晶出ジルコン)、(f)番匠谷流紋岩のzircon autocryst(マグマ進化プロセスの最終段階で晶出したジルコン)。

外部リンク

ページの先頭へ