昭和基地ではケーキやプリンを食べたいなと思っても、外へ買いに行くことはできません。材料はあるのだから作ろうかということで、お菓子作りは久しぶり、あるいは初めての隊員が喫茶係として集まりました。本の通りに作っているつもりでも、毎回何かしらのハプニングがありました。他に昭和基地ならではの苦労もありました。例えば、ふつう生クリームは冷蔵保存しますが、遠く離れた昭和基地には冷凍品として持ち込まれます。これを解凍するとどうしても脂肪分と水分が分離し、「だま」ができてしまうのです。喫茶係の作るお菓子はいつもいい出来というわけではありませんでしたが、隊員達は喜んでくれました。
「陽だまり」という名前には、太陽の昇らない極夜の時期であっても、人の集まるあたたかな憩いの場にしたいという願いを込めています。しかし実際には、隊員のあたたかさに支えられての営業でした。もうすぐ越冬交代を迎えます。基地を離れるまでに、手をかけてお菓子を作り、みなで味わうという幸せを、47次隊へ伝えたいと思っています。
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