南極の夏が終わり、気温がだいぶ低くなってきました。
昭和基地のある東オングル島を囲む海の氷も、厚く、頑丈になって、氷の上で活動することの危険性が減ってきています。
そうなると、他の島や南極大陸への調査のため、海氷上を雪上車やスノーモービルで移動するようになりますが、厚さ数mの氷でもクラックになっている場所もあるので、まずは氷の状況を確認しながら安全なルートを氷の上に設定しなければなりません。
その作業がルート工作です。
3月23日に、手始めに昭和基地の北方の海上約2kmの位置にある岩島までのルート工作を行いました。
ルート工作は、二手に分かれて行います。
まず、先行する隊員が、氷の様子を注意しながら数百mほど前進し、安全を確認できたら目印の赤旗を立てます。
次に、元の位置に待機していた隊員が、ハンドベアリングコンパスとGPSの電子コンパスで旗の方位を測り記録します。方位は東西南北を1〜360の数値で表します。(写真1)
計測が終わったら旗の元に向かい、GPSを使って緯度・経度を測って記録します。また、積雪の深さと海氷の厚さも測定して記録します。(写真2)
この作業を繰り返してルートを延ばしていき、これらのデータをもとに地図上に旗の位置をプロットすると、ルートの地図ができ、次に移動する人は安全かつ速やかに移動ができるようになるのです。(写真3)
南極観測隊は、海氷の状況が変わるので、毎年、このルート工作を行います。(写真4)
この後、岩島ルートに続き、昭和基地周辺の島々や南極大陸のいくつかの地点(大陸の氷床上に上陸する玄関口「とっつき岬」、大陸沿岸の露岩地帯「ラングホブデ」「スカルブスネス」「スカーレン」など)へのルートを工作し、昭和基地のあるオングル諸島から、活動の場をリュツォホルム湾内や南極大陸へと広げていくことになります。
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