GRENE北極気候変動研究事業 研究成果報告会

GRENE北極気候変動研究事業 研究成果報告会

GRENE北極気候変動研究事業 研究成果報告会 開催報告

国立極地研究所は、GRENE北極気候変動研究事業(GRENE北極事業)の5年間にわたる事業の総まとめとして、研究成果報告会を2016年3月3日(木)、4日(金)に国立国語研究所(立川)にて開催しました。2日間で口頭発表34件、ポスター発表109件が行われ、参加者は221名でした。北極気候変動研究におけるAll Japan体制のもと、多くの研究者と最新の研究成果が集まり、盛会のうちに幕を閉じました。

事業概要の報告

はじめに、山内恭プロジェクトマネージャ(PM)からGRENE北極事業のフレームワークについて紹介がありました。本事業は“トップダウンで示された4つの研究戦略目標に向けて、ボトムアップで構想された7つの研究課題を進める”という大変ユニークな構成のもと、分野横断、観測‐モデル連携を進め、国内39機関から延べ300人の研究者が参加したもので、日本の北極研究におけるフラッグシッププロジェクトとして2011年度から2015年度の5年間にわたり実施されました。

研究課題からの成果発表

次に、7つの研究課題からの口頭発表がありました。北極気候変動研究の各分野(モデル・陸域生態系・大気・雪氷・温室効果気体・海洋生態系・海氷/北極海航路)にわたり、充実した高いレベルの最新成果が発表されました。

研究戦略目標からの成果発表

さらに、トップダウンで示された4つの戦略研究目標に対する成果を目標ごとに報告しました。ここが本事業の最大の特色となる部分で、分野横断・観測-モデル連携を強く意識して、多岐にわたる個別の研究成果から戦略研究目標に対する成果を抽出・集約して組み立てた最終アウトカムを発表しました。

ポスターセッション

ポスターセッションでは広く網羅的に本事業の成果を発信する意図で109件に及ぶ成果を発表しました。短い時間設定のなかで積極的な議論が交わされ、本事業がカバーした研究分野の広さと参加研究者の熱意が伺えるセッションでした。

5年間にわたる研究成果のまとめ

最後に、山内PMから本事業全体の成果のまとめが報告されました。本事業では、環北極観測網を展開し、そのデータを分野の壁を越えて利活用するために北極域データアーカイブシステム(ADS)が整備され、多くの解析やモデル研究が進められました。本事業独自のスキームを活かした戦略研究目標への成果の集約をした結果、GRENE北極事業の代表的な成果として新たに次のことが分かってきました。

1. 北極温暖化増幅の季節進行を含めた詳しいしくみ
2. 北極温暖化の中緯度影響、特に日本の冬の寒波・豪雪への影響
3. 北極海氷予測と北極海航路の可能性、
4. 陸上植物活動の変化と大気中 CO2吸収の増加
5. 生態系に影響する海洋酸性化等の海洋環境変化と優占種の変化
6. 氷河・氷床崩壊による海面上昇への寄与

本報告会の締めくくりに、研究推進に特に貢献し極めて大きな成果を挙げた参加研究者が表彰されました。「GRENE北極賞」は吉森正和氏(北大)、「GRENE北極若手賞」は鄭俊介氏、中村哲氏、松野孝平氏(いずれも極地研)が受賞されました。

聴きどころ満載の研究成果を凝縮して発信したこの2日間は、本事業の到達点を確認しあう絶好の機会となりました。このGRENE北極事業で培った体制と基盤、そして研究成果と今後の課題を、これからの北極研究の更なる発展に資するためのLegacyとして、活発な研究推進を次の体制に託して幕を閉じました。

本報告会の講演予稿集は、トップページからダウンロードすることがきます。また、本事業の詳細な最終報告は、『GRENE北極気候変動研究事業成果報告書』(2016年6月末発行予定)にまとめられる予定です。