カナダ北西準州森林センサス観測チーム

森林火災による周極域森林生態系の更新(2015.9.18)

チームメンバー:松浦陽次郎

火災前(2012年の様子)

初夏から続いた寡雨乾燥のために、6月29日、大規模な森林火災がウッドバッファロー国立公園内に広域で発生し、20年来の森林センサス調査地(1999年から土壌も調査)など2箇所が焼失しました。9月の中旬に訪れたときには、焼け跡には、綿毛のような種を飛ばすヤナギラン(fire weedとも呼ばれる)が赤紫の花を咲かせていました。

北方林を構成する針葉樹の中には、球果(松かさ、松ぼっくり)の中にできた種子は、球果がヤニでべったり固まっているため普段は何年経っても落ちてきませんが、森林火災で高温に曝されるとヤニが融けて球果が開き、中から種子が落ちて焼け跡に次世代の芽生えがちゃんと更新する、そんな仕組みを持つものがいます。カナダやアラスカなどの周極域に広がる森林を構成する代表種、ジャックパイン(Pinus banksiana)とクロトウヒ(Picea mariana)は、この仕組みを持っています。数十年~百数十年に一度に起こる森林火災は、周極域の森林生態系が更新する一つのきっかけになっています。

火災後の様子

赤紫のヤナギランの花と、綿毛持って遠くに飛ぶ種子

普段のジャックパインの球果

火災の熱で開いた球果

火災後、種子が落ちて発芽したジャックパイン実生(みしょう)