カナダ森林センサス観測チーム 観測便り

ワイルドなウッドバッファロー国立公園(2012.9)

現在地:カナダ・ノースウエスト準州ウッドバッファロー国立公園(北緯60度、西経114度)

メンバー:大澤晃(京都大学)、松浦陽次郎(森林総研)他5名
担当:森下智陽(森林総研)

図1

観測をおこなっている森林は、カナダのアルバータ州とノースウエスト準州をまたぐ形で位置しているウッドバッファロー国立公園にあります。

最近、日本でも室戸岬、富士山など世界遺産への登録や登録に向けた動きが活発ですが、この国立公園は約30年前から世界遺産にも登録されている広大で自然豊かな国立公園で、九州がすっぽり入るくらいの広さです。

写真2

写真3

写真4

名前の通りバッファロー(シンリンバイソン)が数多く住んでおり、滞在しているフォートスミスの街から観測地に向かう際、毎回のようにバッファローの群れを見かけます(写真1)。この国立公園では、バッファローだけでなく、クマ、オオカミ、大ヘビなど多様な動物が見られます。実際、今回の調査期間内、バッファローに加え、クマ、オオカミ、ライチョウ(写真2)、そして雁と思われる渡り鳥を目にすることができました。ん?クマ?そうです、クマも目撃することがあります(写真3)。実際に目にすることもありましたし、観測地には、その痕跡が残っていたりもします。クマとの不意な遭遇は、非常に危険ですから、車から降りて観測地まで移動する際は、笛を鳴らしたり、大きな声を出したり、手には万が一のためのクマよけスプレーを握って、注意深く、しかしお祭り騒ぎのごとく森に入ります。彼らの一番の興味は食べることですから、飲み水だけを持って、お弁当などは車の中においていきます。これらの対策が功を奏したのか、移動中の車中からクマを間近に目撃することはあっても、現場でクマに遭遇することはなく、無事に観測をおこなえました。

そして興味深かったのは、観測地上空を、越冬すべく北から南に向かって飛んでいくと思われた雁の群れの中には、ぐるりと大きく旋回して、また北の方へ向かっていくものもありました(写真4)。真偽の程はわかりませんが、群れからはぐれてしまう子達も見受けられることから察するに、実際の移動ではなくて、群れを作って飛んでいく練習をしているのかもしれません。仕事の手を休め、空を見上げて、その光景を見ていると、日本で帰りを待っている家族にとても会いたくなりました。

観測をおこなっていて、オリの中でもなければ、柵があるわけでもなく、同じ森の中で彼らと一緒にうごめいているんだと気づいたとき、動物の対極に位置する人間ではなく、自分も、いち動物なんだと思えてきます。ただし私たちは彼ら、そしてその森を構成する植物のように、その場を生活の場としているわけではありません。その点では、いち動物であったとしても、侵入者でもあるわけです。

彼らの生活の場、お庭をちょいと拝借して、なにやらゴソゴソとやらせていただいている、でもあなた方の生活を脅かすつもりは毛頭ございません!…そんな気持ちで、研究を続けられたらと思います。