砕氷船ローリエ航海チーム

ローリエ号から下船(2014.7.23)

チームメンバー:菊地 隆(海洋研究開発機構)

7月23日 その1 係留系BCH-13回収作業

昨日の係留系設置の後、DBO-5の観測線でCTD/採水観測などの海洋観測をしていたのですが......、霧が出てきて、海氷も多く、結局3点での観測を終えたところでそれ以上の観測を断念しました。とても残念。あとは昨年のこの航海で設置したSCH-13の回収のみ。岸近くに多くある今年の海氷状況に加えて、霧による視界不良はすごく心配です。

で、最終日の7/23の朝になり、昨年設置した海域に来てみると、幸いなことに霧も(少なくとも朝の段階では)出ておらず、そして海氷状況も場所によっては多いものの、広い開水面もあちこちにある状態。朝食後に早速回収のための作業を開始。まずは昨年SCH-13を設置した直上近くで係留系の確認作業をして応答を確認。OK! ほっとする。そのあと、海氷状況が良いタイミングを待っていたら......少しずつ霧が出てきた。少しずつ焦る。バロー沖は前回の海域に比べて海の流れがあるので、海氷の漂流状況も確認しつつ、開水面が広い場所が係留系の場所に来るタイミングを計る。そしてまだ海氷が少しはあるものの、開水面と霧の状況を考えて、"Let it GO!"(by Captain)... と切り離しするように甲板に伝える....。水深が浅いので、切り離した係留系はすぐに浮上するのですが、ここは海氷域なので、見つけるまでが長く感じます。ものすごく緊張します。

切離コマンドを送って数秒後、船の方が前方に浮上してきたフロートを発見。良かった!海氷の下に上がったりしなくって......。SCH-13回収の際もそうでしたが、ものすごーくホッとしました。海上に出してあったボートに乗った船側の人たちが浮上したフロートを確保して、船に近づき、船上に持ち上げる。デッキに上げて、回収作業完了。

船長、甲板長はじめ船側の皆さんに心の底からの感謝......。

感慨に浸る間もなく、早速回収した機材を洗って、データを取り出して(ちゃんとデータが取れている様子。Good!)、そして返送用に片づけて......そうです、今日の午後には下船なのです。

7月23日 その2 ローリエ号から下船

昼食前には片づけもほぼ終えて、下船準備完了。船側も係留系回収作業が終わった後、速やかにバローの街の沖合に移動し、ヘリコプターによる人・物の移動が始まる。乗船していた研究者は全員がここで下船。昼食(ローリエ号での最後の食事)のあと、まずは各個人の荷物や採取した試料などをまとめて陸上へ移送する。その後に順番で下船する。我々は、カナダ海洋科学研究所の首席研究者とともに、午後3時過ぎにヘリコプターに乗る。みんなに手を振って、船を離れ、バロー空港へ。本当に短いフライトの後、無事にバローに上陸。航海が終了しました。

本課題がローリエ号の7月の北極(ベーリング海・チャクチ海)航海に参加するようになって3年目。いろいろと現場に行ってから心配することがありました。特に毎年バロー沖の海氷状況には悩まされましたが、今年は幸いなことに当初予定していた観測作業をほぼ問題なく終えることができました。海氷・気象・海象状況については運が良かったとも言えますが、準備を含めて作業がしっかり行えたことが良かったと思います。

関係したみなさんに、感謝。次は、得られたデータから先に考えていた我々の仮説がどのように立証されるのか(されないのか)を調べていくべきでしょうね。

得られた係留系データをざっと見る限り、2012-13と2013-14の冬では太平洋側北極海の海氷・海洋・気象状況は全く違うように見えます。改めて、これからが研究活動のスタートです。このような状況を鑑みて、海氷が海洋環境(特に生態系に対して)にどのような影響を及ぼしているのか、新たな知見を公表していけるようにしたいと思います。これで、ローリエ号の観測航海の報告を終えます。