研究課題(5)

北極域における温室効果気体の循環とその気候応答の解明

研究代表者:青木周司(東北大学)

計画概要

北半球高緯度域における大気中の二酸化炭素やメタン、 一酸化二窒素などの温室効果気体濃度やそれらの同位体および関連する酸素濃度などの分布や変動を、地上基地、航空機を用いた総合的な観測から詳細に明らかにします。温室効果気体および関連物質の変動には北極海も重要な役割を果たしていると考えられていますが、 その実態はほとんど知られていません。このため、海洋地球研究船「みらい」による海洋観測も実施します。

それらの観測データを、 日本で開発されたほぼすべての高解像度大気化学輸送モデルで解析し、 北極域における温室効果気体の放出源・吸収源の分布とその変動を定量化します。さらに、高解像度大気化学輸送モデルを、陸上生態系モデルや海洋物質循環モデルと結合し、観測された濃度・同位体の年々変動の再現実験を行うことによって、 北極域における温室効果気体循環プロセスを明らかにし、 気候変動によって温室効果気体循環がどのように応答するか検討します。

また、 グリーンランドなどで採取された氷床コアやフィルン(通気層)空気を分析することにより、 過去から現在までの温室効果気体の濃度と同位体の変動も明らかにします。得られたデータを解析することにより、 温室効果気体の発生源・消滅源の時間変化や発生源の種類別強度の気候変化に対する応答の実態を明らかにし、 北極域での温室効果気体の変動への各プロセスの寄与を解明します。

そうした研究を行うことにより、 戦略研究目標②「全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明」の達成に貢献します。

温室効果気体観測を実施しているスバールバル諸島ニーオルスン観測基地