(資料1-1)

モニタリング観測とは

研究観測

 研究観測は、大きな科学的成果が期待でき、学術の水準を上げるものである。研究観測の目的、性格により以下の、重点プロジェクト研究観測、一般プロジェクト研究観測、萌芽研究観測、モニタリング研究観測に区分して第VII期において推進することとした。

○重点プロジェクト研究観測:計画期間を通じて集中的に取り組む研究観測である。我が国が優位に進めている研究観測や国際貢献が求められる研究観測、社会的要請に応える研究観測を推進する。特に、第VII期計画の期間がIPY2007-2008の期間を含むことから、IPY2007-2008の趣旨に沿った研究観測を軸とし、国際協調または日本独自の学際的、戦略的かつ独創的な取り組みにより実施される研究観測とした。

○一般プロジェクト研究観測:国内研究者組織による研究観測や国内研究者組織と外国の機関や研究者組織との共同企画による比較的小規模な研究観測である。IPY2007-2008と連携する研究観測も含まれる。

○萌芽研究観測:将来の重点プロジェクト研究観測に発展する可能性が期待される研究観測である。

○モニタリング研究観測:モニタリング研究観測は長期的に継続して観測データの蓄積を図りつつ研究を進める研究観測である。

モニタリング研究観測の分類

対象とする領域、用いる観測手段により、下記の5つのサブテーマに分類し、実施する。

 M-1 宙空圏変動のモニタリング
 M-2 気水圏変動のモニタリング
 M-3 地殻圏変動のモニタリング
 M-4 生態圏変動のモニタリング
 M-5 地球観測衛星データによる環境変動のモニタリング

M-1 宙空圏変動のモニタリング

 太陽活動に伴う極域電磁環境の長期変動をモニターすることを目的とする。太陽から地球に降り注ぐ電磁輻射、高エネルギー粒子、太陽風は、太陽活動とともに変動する。それは地球の電離圏や磁気圏の変動をもたらし、その結果は、極域のオーロラ活動、地磁気変化、電磁波動現象などとして現れる。地上よりこれらの現象の観測を行うことにより、電離圏、磁気圏といった地球の周囲の環境が、太陽活動と共にどのように変動しているかを知ることができる。また、こうした観測を長期間行うことにより、地球を取り囲む環境が長期的にどのように変化してゆくのか、という将来予測を行うことにもつながると期待される。観測項目は以下の通り。

 ①全天カメラによるオーロラ形態、発光強度の観測
 ②掃天フォトメータによるオーロラ強度分布の観測
 ③リオメータ・イメージングリオメータによるオーロラ降下粒子の観測
 ④地磁気絶対観測
 ⑤フラックスゲート磁力計による地磁気3成分変化観測
 ⑥インダクション磁力計によるULF帯電磁波動観測
 ⑦ELF/VLF帯電磁波動観測

M-2 気水圏変動のモニタリング

 南極域の大気現象は全球規模の気候システムと深く関わっており、同時に、南極大気中の諸現象が、気候システムとその変動において主たる要因となるプロセスを多く含む。従って、南極の大気現象を監視することは、地球温暖化等の地球規模環境変化の診断に極めて重要である。南極域は、人間活動の活発な北半球中・高緯度地域から最も遠く離れており、地球規模大気環境のバックグラウンドの変化を監視する上で最適な場所である。温室効果気体、エアロゾル、雲、オゾン等の大気成分の動態を長期的に昭和基地及び海洋上でモニタリングするとともに、人工衛星や地上リモートセンシング等により、放射収支に関わる雲やエアロゾル等の動態を把握し、地球規模の気候・環境変動の現況評価と今後の変化予測に資する観測を実施する。また、南極大陸氷床は、気候システムにおいては地球の冷源として作用する一方、大陸氷床には気候変動に応答した変化が現れる。氷床氷縁や氷床表面質量収支の変動を系統的に観測することは、地球温暖化現象など気候変動の理解と評価の上で必須である。更に、南極大陸周辺海域に広がる広大な海氷域は顕著な季節変化を通して、南大洋の海洋構造及び循環場の形成に寄与している。また、海氷下を含めた海洋循環場は地球規模海洋大循環の駆動源の一つであることから、海洋循環の実態を監視することも重要である。観測項目は以下の通り。

 ①温室効果気体の観測
 ②エアロゾル・雲の観測
 ③氷床動態観測
 ④海氷・海洋循環変動観測

M-3 地殻圏変動のモニタリング

 固体地球はマントルダイナミクス及びプレート運動等により、絶えずセンチメートル/年の速度で相対運動したり内部変形したりしている。また、地殻圏は大気、海洋、氷床変動の影響を受けて幅広い時間スケールで変動していることが知られている。地球温暖化の指標である海水位の上昇は、地殻隆起量を精度良く分離・補正して検知されなければならない。これら変動現象は宇宙技術をはじめとする各種の新技術で、検出可能になってきたが、汎地球観測網を用いて包括的に観測する必要がある。南極における数少ない汎地球観測網の観測点である昭和基地において、また、往復航路上にて国際的に標準化された機器により取得されたデータを国際的に流通するデジタルフォーマットにより提供し続けることが何よりも重要である。観測項目は以下の通り。

 ①FDSN網において実施する短周期及び広帯域地震計による観測
 ②GGP網において実施する超伝導重力計による重力連続観測
 ③IVS網において実施するVLBI観測
 ④IGS網-GPS点の維持、及びIDS網において実施するDORIS観測
 ⑤海洋水位変動観測及び海底圧力計観測