(資料3) 南極地域観測隊員として観測事業に携わることについての説明(1)はじめに 南極地域観測は、国際協力の下に日本国が実施する事業の一つです。事業の遂行に当たっては、極地科学に関する研究や観測及び業務に関係する複数の機関が担当分野の責任を負い、文部科学省に置かれている南極地域観測統合推進本部が省庁横断的にそれらを統合推進する責任を負っています。 日本の南極地域観測は、1957年(昭和32年)1月29日、南極大陸リュツォ・ホルム湾にある東オングル島に昭和基地建設を決めて以来、半世紀にわたって実施されています。この間、輸送に必要な船舶の老朽化等により一時中断があったものの、1961年(昭和36年)の南極条約の発効、極地観測継続の重要性などから南極地域観測事業は再開されました。その後、南極大陸にある日本の観測基地は、拡充整備され、観測と研究が中断することなく実施されています。世界的な観測網の拠点として、定常的な気象観測の継続実施やオゾンホールの発見、研究プロジェクトとしての月隕石・火星隕石を含む世界最多級の隕石の採取、氷床掘削で得た氷床コアの解析による過去数十万年にわたる気候変動の解明及び生態系や大気中の二酸化炭素量のモニタリングによる環境変動の研究など多くの観測研究の成果を得ています。 南極地域観測隊は、観測計画と設営計画の下に、毎年、新たに編成されます。南極地域に派遣される観測隊員は、上記本部長(文部科学大臣)から「観測隊員委嘱」をされます。隊長、副隊長及び隊員で組織される南極地域観測隊は、『南極観測の実施に必要な用務を一体となって遂行する。』ことが南極観測への参加を決定した昭和30年11月の「閣議決定」のなかに示されています。 このように南極地域観測隊(JARE:Japanese Antarctic Research Expedition)は、極地観測における日本のナショナルチームといえます。 (2)観測隊員に必要なナショナルチームの一員としての自覚 南極地域観測事業は、国の事業として多額の税金が投入され実施されています。その業務は国から「隊員委嘱」を受けた隊員が、観測隊長の命を受け実施するものであるということを全員が自覚しておかなければなりません。隊員一人一人の行動が観測隊の活動結果として南極本部へ報告されます。隊員は、極地観測における日本のナショナルチームを構成する誇りと意識を持って任務を遂行するとともに、国民の南極地域観測に対する信頼を損なうことのないよう、自らの行動に責任を持つ必要があります。 (3)観測隊員として応募する前に理解すべきこと 1)家族や職場との十分な意思疎通が必要なこと これらの個人的事情について、なんらかの憂慮がある場合や問題が解決できない場合は、観測隊員となるべきではありません。 2)必ずしも日本国内と同じ生活環境、職場環境ではないこと 3)医療環境の実情を理解し、納得すること 隊員候補者となった段階で、機会を設けて詳しい説明がありますが、特殊な環境下にある南極の医療について十分に理解、納得した上で観測隊員となる決断をすることが必要です。 「南極における医療の現状と限界についてのインフォームド・コンセント」については、資料4を熟読し、現状と限界を理解した上で応募してください。 4)相互協力が欠かせないこと 特に、作業計画が多い夏期作業期間においては、限られた人数、物資及び厳しい自然環境の下での業務遂行のため、作業時間が長時間に及ぶことも珍しくありません。このような時期においても、観測隊長の命令に従い各人の協調性と専門的能力をもって、一致団結して事にあたることが必要となります。 5)自分の身は、自分で守ること 危険防止については、機会ごとに提供される情報やマニュアル等を確認しておくとともに「自分の身は自分で守る」という基本原則を常に念頭に置いておくことが必要です。 特に観測隊は、業務の遂行に必要な専門家による限られた人員で構成された集団であるため、万一傷病等で職務の遂行ができなくなった場合、余人を充てることが困難な状況になります。傷病は、事故と同様に個人のみならず観測隊の活動にも大きな影響を及ぼすものであることを自覚して日々生活することが必要です。 南極地域という特殊な環境での生活において、隊員は、医療担当隊員により実施される健康指導を守り、円滑な集団生活の創造に進んで協力するなど、身体、精神の両面の健康について自己の責任で管理しなければなりません。 6)環境保護のため行動に制限があること |