南極用風力発電機の国内試験を実施

掲載日:2008年11月20日

 情報・システム研究機構国立極地研究所(所長:藤井理行)は、秋田県にかほ市の協力を得て、同市内において、南極昭和基地設置用の風力発電機の国内試験を実施することになりましたので、お知らせします。

目的

 南極昭和基地での環境保全および化石燃料消費量削減の目的から、南極地域観測隊では自然エネルギーの利用を進めている。現在は、太陽光発電パネル55kW分と10kW風力発電機1基が稼働している。しかし、これは基地消費電力全体の3%(年平均約5kW)に過ぎない。自然エネルギーの割合を高めるために、20kW級の風車を複数台設置することを計画している。

 昭和基地では、30m/s以上の風速を伴うブリザードが年平均24回程度襲来する。そのような過酷な状況で風車を運転するには、発電機内部への雪の浸入、スノードリフト(風下への雪の堆積)、静電気ノイズなど、強風および寒冷に伴う複合的な要素が、大きく運転の成否に影響する。それらの影響をできるだけ事前に把握し必要な対策を立てるために、国内総合試験を実施する。また、隊員が南極で建設するための事前組み立て訓練、実地運転に即したメンテナンス訓練も行う。

国内試験地(図1、2参照)

 秋田県にかほ市仁賀保高原風力発電所(秋田県にかほ市馬場)に隣接する市有地
※年間平均風速が7.1m/sであり、昭和基地の6.5m/sと類似している。また、冬期には北西の季節風が強く、昭和基地のブリザードに似た気象条件になり、雪粒によるブレードの摩耗や制御室内への雪の浸入および制御室によるスノードリフトの有無が確認できることから、試験地として選定した。

試験期間

 平成21年4月〜平成22年8月頃(予定)

南極における実用化の目処

 国内接続試験が順調に進んだ場合、平成22年11月出発予定の南極観測船「しらせ」に積み込み、平成23年1月頃に第52次南極地域観測隊の手により南極の昭和基地に設置予定。平成23年2月より運用開始予定。1号機の運転状況が良好な場合、53次隊以降、合計で5機以上を建設予定。

風力発電機概要(図3参照)

 定格最大出力:20kW
 全高:12m
 全副:6.2m
 重量:6トン
 耐風速:80m/s
 制動方式(強風時の対策):空気圧駆動、ディスクブレーキ

図1 国内試験場所地図(赤い矢印の先 Google Mapより)

図2 国内試験地近景

図3 設置予定と同型の10kW風力発電機(風車部分)