南極北極ジュニアフォーラム2010開催

掲載日:2010年11月14日

 11月14日(日)国立極地研究所で100名近い出席者のもと「南極北極ジュニアフォーラム2010」が開催された。
 フォーラムでは2010年6月10日から9月8日のあいだに応募があった「第7回 中高生南極北極科学コンテスト」受賞者11組の表彰式と口頭発表、昨年度の同コンテスト受賞提案2件の実験報告が行われた。

「第7回 中高生南極北極科学コンテスト」表彰式と口頭発表

 南極科学賞2件と北極科学賞1件、そして特別賞8件の表彰式を最初に行い、引き続き受賞者11組により、本格的なシンポジウムと同様のスタイルで口頭発表がされた。提案者の発表に研究者や来場者から質問・感想が飛び交い、提案した中高生たちは緊張と熱気に包まれた様子であった。
 表彰を受けた南極科学賞2件と北極科学賞1件は、第52次南極観測隊及び北極で観測をする研究者グループにより現地で実験が行われ、来年のこの場で実験報告がされる予定である。

北極科学賞を受賞した青森県立名久井農業高等学校チーム・フローラ・フォトニクスの口頭発表

「第6回 中高生南極北極科学コンテスト」受賞提案の実験報告 

北極圏にあるニーオルスン基地で行われた観測報告

 後半では昨年度の「第6回 中高生南極北極科学コンテスト」で南極科学賞、北極・南極科学賞を受けたそれぞれの提案に対する実験報告が関係者から行われた。
 はじめに北極・南極科学賞を受けた千葉県大多喜町立大多喜中学校PROJECT “SWUN”南極グループの「南極では日時計の影はどのような軌跡を描くのか」の実験報告が、北極圏にあるニーオルソン基地で観測をした福地教授と本吉第51次南極観測隊長からあった。そして南極の昭和基地からも衛星回線を使ったTV会議システムを通して工藤第51次越冬隊長によりリアルタイムで報告が行われた。
 実験にあたり風や寒さなどによる天候の影響、太陽高度と観測位置の関係、方位磁石にズレが生じる等の問題点が報告されると、大多喜中メンバーからは「自分たちが千葉で気づかなかったことが、極地で実験するのにとても難しい障害になるとわかりました」という感想が返された。

 次に、南極科学賞を受けた大阪教育大学附属池田中学校・松岡里咲さんの「観測隊員の見る夢は?」の報告が工藤越冬隊長からあった。テーマが大変プライバシーに関係する内容のため、越冬隊員には強制せずにアンケート方式で自発的に参加してもらっており、工藤越冬隊長もその内容は見ていないとのこと。「隊長は最近どのような夢を見ましたか」という松岡さんの質問に、「ペンギン調査のことを考えていたら、夢にペンギンが出てきました」とあり、会場は笑いに包まれた。
 昭和基地では越冬終了まで引き続き二つの実験を行っていくとの報告があり、提案した生徒たちがこの報告を受けてどのような考察をするのかが楽しみである。

会場と昭和基地の工藤越冬隊長とのやりとりの様子

 自分たちの提案が研究者たちの審査を受け、観測・実験がされ、結果がまた戻されるというこのコンテストは、科学すること本来の面白さや刺激を中高生たちに伝えることができるのではないだろうか。他の受賞者の提案にも興味を示し盛んに交流を持っていた姿が印象的であった。フォーラムの会場にいた生徒たちの表情や発言から、他のコンテストとは一線を画したこのコンテストの意味を感じることができた。