やまと山脈付近の裸氷帯から回収された南極隕石より新種の炭素質コンドライト発見掲載日:2014年1月10日 国立極地研究所南極隕石ラボラトリーでは南極隕石の分類を継続して行っている。南極で過去に採集したY-82094隕石の分類を当ラボラトリーが再検討した結果、既存の炭素質コンドライトのどのグループにも属さない新種の隕石であることが判明した。この研究成果により、太陽系の物質進化過程に新たな知見を与えることが期待される。また、この研究成果は2014年2月に、国際隕石学会誌のMeteoritics & Planetary Scienceに公表される。 研究の背景炭素質コンドライトは、最も始原的な特徴を持つ隕石種である。原始太陽系星雲から凝縮して形成したとされる物質(コンドルールや難揮発性成分)が、ほとんど変化を受けずに保存されており、CI, CM, CV, CR, CK, CO, CHなどの化学グループにこれまで分類されてきた。第23次南極地域観測隊(JARE-23:1982~83)が採集した隕石の中にユニークなCO3コンドライトとして分類・公表されていた試料があったが、現在もすすめている隕石の分類作業中にこの隕石を再検討した結果、類似の隕石はなく、既存の炭素質コンドライトのどのグループにも属さない新種の隕石であることが判明した。 研究手法組織および主要構成鉱物の化学組成の決定には、国立極地研究所の走査型電子顕微鏡(JEOL, JSM-5900LV)およびエレクトロンプローブマイクロアナライザー(JEOL, JXA-8200)を用いた。また、全岩化学組成は、ブルターニュ大学(フランス)のBarrat教授によって、ICP質量分析計を用いて測定された。 研究成果この隕石の特徴は、 以上の観察結果に基づき、次の事が結論された。 結果、この隕石は新種の炭素質コンドライトと結論され、世界の隕石コレクションに類似する隕石は認められず、また、やまと隕石のコレクションの中にもY-82094のペアと考えられる隕石は見当たらなかった。 ※注1. コンドルール:コンドライトに区別される隕石に含まれている球状の粒子 図1:Yamato-82094隕石の外観 図2:薄片写真。4種類のコンドライトの薄片写真(すべて幅2mm)。Y-82094はコンドルール(球形)の大きさ、存在量の点で普通コンドライト(ALH-77035)に類似し、CVおよびCOコンドライトと異なる。マトリックス(暗色のコンドルールの間を埋める物質)もY-82094は普通コンドライトに類似する。しかし、他の岩石学的、化学的性質は炭素質コンドライトであることを示す(本文参照)。 今後の展望現在、南極隕石ラボラトリには、18,000個近い隕石が所蔵されており、初期分類作業が進められている。また、分類の終わった隕石は、国内外の研究者と共同で分析が進められているため、今後も、新しいタイプの隕石が発見される可能性が高い。これらの隕石を、研究することで、太陽系の物質進化過程に大きな知見を与えるが期待される。特に、炭素質コンドライトは、初期太陽系形成史を理解する上で、非常に重要な試料である。このように極地研究所の保有する多数の隕石は隕石の分類学のみならず、それに基づく原始太陽系における惑星物質の形成に関する知見を拡大するのに大いに有用であり、さらなる試料の分類、研究が重要となっている。 発表論文この研究成果は2014年初めに、国際隕石学会誌のMeteoritics & Planetary Scienceに公表される。 論文タイトルPetrology and bulk chemistry of Yamato-82094, a new type of carbonaceous chondrite(Yamato-82094隕石の岩石学と全岩元素組成:新しいタイプの炭素質コンドライト) 著者Makoto Kimura(木村眞:茨城大学・国立極地研究所) 本件問い合わせ先研究成果について国立極地研究所 助教 今栄 直也 報道について国立極地研究所 広報室 小濱 広美 |