大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

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「北極域研究共同推進拠点」が活動を開始

2016年4月1日

北海道大学
情報・システム研究機構 国立極地研究所
海洋研究開発機構

国立大学法人北海道大学北極域研究センター、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所国際北極環境研究センター、国立研究開発法人海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センターは、北海道大学北極域研究センターを認定施設、国立極地研究所国際北極環境研究センターと海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センターを連携施設としたネットワーク型による「北極域研究共同推進拠点」として文部科学大臣の認定を受け、北極域における環境と人間の相互作用の解明に向けた異分野連携による課題解決に資する研究の進展を図ることを目的として、平成28年4月1日から活動を開始することとなりました。

背景

北極圏とその周辺地域(以下、北極域)は、温暖化が最も著しい地域で、生態系の変化や著しい海氷減少などが顕著になっています。海氷減少は大気循環に影響を与え、中緯度地域の極端気象を頻発させる原因となっていることが示唆されています。また、環境の変化は北極海における船舶の運航機会の増加や石油や天然ガス等の天然資源の開発を促進させるなど経済面での利点を生み出す一方で、北極域における人間活動の活発化による環境汚染や国家間の新たな摩擦の原因となる可能性をはらんでいます。このような地球規模の気候変動や社会・経済活動の変化によって生じる課題は北極圏国だけでは解決できないため、周辺国の協力にも大きな期待が寄せられています。

こうした背景を踏まえ、日本では2015年10月16日に「我が国の北極政策」が新たに策定されました。そこでは、日本の強みである科学技術をグローバルな視点で最大限に活用し、北極域の観測や研究を推進すると共に、東アジアと欧州を北極海で結ぶ北極海航路に代表される産官との取り組みの要性も強調されており、北極の課題解決において日本が主導的な役割を積極的に果たす決意が示されています。

連携ネットワーク型拠点の意義と申請の経緯

北極の環境問題が国際社会共通の課題となっている一方で、北極に関する科学的側面の解明はまだ十分ではありません。気候、物質循環、生物多様性等に、人間活動の影響を含めて、北極の変化が地球全体に与える影響について総合的に捉え、精緻な将来予測や社会・経済的影響を明らかにするための総合的な研究が求められています。その上で、変わりつつある北極域の環境に対する適応策の提示や、持続可能な新たな産業分野や市場の創出が必要です。

文部科学省の共同利用・共同研究拠点制度は、全国の国公私立大学の研究者等を対象に、大型の研究設備、大量の資料・データ等の共同利用や、共同研究を行うことで、当該分野の学術研究を効果的・効率的に推進する制度です。国立大学改革が加速する昨今では、研究力強化、グローバル化、イノベーション機能の強化実現を推進するシステムとして共同利用・共同研究拠点制度を活用した産業界等との連携によるイノベーションの創出に資する活動も求められています。同制度では、研究分野の特性に応じて、複数の研究所や研究施設がネットワークを構成して拠点を設置することが認められており、今般、大学共同利用機関や国立研究開発法人等の研究施設を、共にネットワークを形成する施設として位置づけ、「連携ネットワーク型拠点」として申請することが可能になりました。これによって、全国の研究者がより多様で質の高い研究施設や資料・データ等を活用することができるようになりました。

国立極地研究所、海洋研究開発機構及び北海道大学の3機関は、文部科学省が別に公募を実施した北極域研究推進プロジェクト(ArCS:Arctic Challenge for Sustainability)の代表・副代表機関として採択されるなど、これまでにも北極域研究の総合的推進に向けた連携体制の強化を進めてきました。この度、更なる連携強化の一環として本拠点の新規認定を申請し、全国初の連携ネットワーク型拠点として認定を受けることとなりました。これに伴い、3機関に所属する自然科学から人文社会科学や実学に至る広範な分野の多数の北極域研究者や、3機関が保有する船舶や海外拠点等の研究インフラを活用しつつ密接な連携を図ることが可能となり、北極域の課題解決において日本が国際社会で期待されている科学的視点に基づく貢献に著しく寄与することが期待されます。

拠点の役割

北極域研究共同推進拠点では、北極域の持続可能な利用と保全に関する新たな学術領域の創成を促すため、北極域における環境と人間の相互作用の解明に向けた異分野連携による課題解決に資する先端的・学際的共同研究や、研究課題の形成を目的とした研究集会を実施します。また、研究者コミュニティと企業や官公庁とを仲介し、北極域の課題解決に資する産学官の取り組みを促進するために、北極に関する最新の科学的知見を提供するセミナーを開催し北極の課題解決の取り組みへの新規参入の需要を喚起すると共に、産学官が連携し共同で解決にあたる課題を設定する研究集会や、共同研究に向けたフィージビリティ・スタディの機会を提供します。さらに、北極域に関する課題解決の取り組みを持続的に推進するため、北極の問題に関する俯瞰的な視野を持ち国際的な議論をけん引できる人材を育成するためのコースを提供します。これらの取り組みに関する情報や成果を、拠点ホームページや国際シンポジウム等を通して広く国内外に向けて発信し、日本の北極に関する研究のプレゼンス向上に貢献します。

将来展望

日本は1950 年代から半世紀以上にわたり、北極の観測や研究に従事してきました。国際研究コミュニティから、その長年の蓄積と高い研究水準に対し大きな評価や期待を受けています。我が国の北極政策では、強みである科学技術をグローバルな視点で最大限に活用することで、日本が北極をめぐる課題への対応における主要なプレイヤーとして国際社会に貢献することが目標として述べられています。そのための具体的な取り組みとして、国内の研究拠点の整備や、研究活動に従事する人材の育成が設定されています。北極域研究共同推進拠点では、我が国の北極政策を踏まえ、北極域の解明と課題解決に関する新たな学術領域の創成や北極域における新たな産業や市場の創出を促進する機能、それらの活動を持続的に発展させるための人材の育成機能と、以上の取り組みの成果を集約し国際社会に発信する機能を有する、北極の課題解決に関する日本の中核的な拠点としての役割を果たすことを目指します。そして、我が国が北極をめぐる課題へ産学官を挙げて対応し、国際社会に貢献するための役割の一端を担います。

資料
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