大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

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研究成果

昭和基地の大気中CO2濃度が400ppmを突破

2016年7月12日

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第57次南極地域観測隊(隊長:門倉昭、副隊長:樋口和生)の観測により、2016年5月14日、昭和基地の大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が1984年の観測開始以降初めて400ppmを突破し、さらに6月の月平均濃度が400.51ppmとなったことが分かりました。北極・ニーオルスンでは4年前に400ppmに達していますが、今回の昭和基地におけるCO2濃度の400ppm突破は、人口の集中する北半球から離れた南極域にも確実に人間活動の影響が及んでいることを示しています。CO2をはじめとした大気中温室効果ガスの増加は近年の地球温暖化の主因とされ、引き続き大気中CO2濃度の監視が必要です。

国立極地研究所(所長:白石和行) 気水圏研究グループと東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センターの青木周司教授および森本真司教授らの研究グループは、共同で、1984年より昭和基地(図1)において大気中CO2濃度の変動を監視しています。昭和基地では歴代の南極地域観測隊 越冬隊員の手によって、32年間休むことなくCO2濃度の観測が続けられています(図2)。

図1:南極・昭和基地。矢印で示した青い建物(観測棟)でCO2の測定を実施している。

図2:昭和基地の観測棟でCO2濃度の測定を行う第57次南極地域観測隊越冬隊 荒川逸人隊員(モニタリング観測・気水圏変動担当)。

第57次南極地域観測隊によると、昭和基地において大気中CO2濃度の日平均値(暫定値)が2016年5月14日に400.06ppm(注1)となり、観測開始以降初めて400ppmを突破しました(図3)。さらに6月には、月平均値としても400.51ppmに達しました。大気中CO2濃度は、産業革命以前は280ppm程度で一定でしたが、その後の化石燃料消費等の人間活動によってCO2をはじめとした温室効果ガスが大気に放出され、その大気中濃度は近年急激に増加しています。これまで、2013年5月にハワイのマウナロア山でCO2濃度が400ppmを越え、世界各地で400ppmを越えていますが、南極地域においてはまだ400ppmには到達していませんでした。

図3: 昭和基地における2014年以降の大気中CO2濃度の変動。

同グループでは、北極・スバールバル諸島ニーオルスンにおいても1991年から大気中CO2濃度を観測しています(図4)。ニーオルスンでは、大気中CO2濃度は既に2012年3月に瞬間値として400ppmを越えており、2014年には年平均値として400ppmに到達していました。北半球では人間活動の影響を強く受けるため、南極に比べると高い濃度が観測されています。人間活動の集中している北半球から遠く離れ、地球上で最も清浄な大気を観測している南極においても400ppmを越えたことは、人間活動の影響が確実に全球に及んでいることを示しています。

図4: 南極・昭和基地(青)および北極・ニーオルスン(赤)における大気中CO2濃度の長期変動。丸い点は観測値(北極:定期採取される大気試料の分析値、南極:連続観測結果の日平均値)、太い線は観測値への最適化曲線、細い線は最適化曲線から季節変化の要素を取り除き、経年変化を抜き出したもの。植物活動が活発になる夏には光合成により大気中CO2が吸収され、陸地の多い北半球ではその影響を強く受けるため、北極では南極よりも季節変動が大きくなる。

昭和基地における2015年の大気中CO2濃度の年平均値は397.99ppmであり、最近10年間のCO2濃度増加率が約2ppm/年であることを考慮すると、1〜2年の内には年平均値としても400ppmを超えることが予想されます。CO2をはじめとした温室効果ガスは近年の地球温暖化の主因とされており、今後も引き続き大気中CO2濃度の挙動を監視していく必要があります。

注1

ppmは百万分率(100万分の1)。1ppmは0.0001%。

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国立極地研究所 気水圏研究グループ 助教 後藤大輔

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国立極地研究所 広報室 室長 本吉洋一
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※更新情報: 本文の1文目と、お問い合わせ先の表記を変更しました。(2016年7月13日)

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