大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

国立極地研究所ホーム>研究成果・トピックス

トピックス

小惑星の名前に「極地研」!

2018年10月11日

火星と木星の間を周回する小惑星のひとつに「(7773)Kyokuchiken」(極地研)という名前がつきました。国際天文学連合(International Astronomical Union, IAU)の中の小惑星センター(Minor Planet Center)が発行する「Minor Planet Circulars(MPCs)」の9月25日号で発表されました。

1992年3月23日に北海道在住の円館金(えんだて・きん)氏が撮影した写真(図1)をもとに、天文家である渡辺和郎(わたなべ・かずお)氏が位置を精密に測定したもので、両氏が発見した小惑星として「1992FS」という仮符号が付けられていました。

図1:小惑星「(7773)Kyokuchiken」の発見時の写真。赤い矢印に挟まれた斜め一対の点が発見された小惑星。同一のフィルムに、位置を上下方向に少しずらして2回撮影されたたもの。1回目と2回目の撮影の位置を意図的にずらすことにより、恒星は上下の対となった2点として撮影されるが、小惑星は撮影の時間(露光時間18分×2回=36分間)も移動しているため、恒星とは違った方向に2個並んで写る。これにより、小惑星を見つけることができる。提供:円館金氏・渡辺和郎氏。

その後、両氏により1992FSの軌道を求めるための追跡観測が行われました。軌道を確定するには小惑星が太陽の周りを1周以上するのを見定めなくてはならず、息の長い観測が必要となります。そして1997年、7773番目の小惑星として確定した軌道が認められました。

それから11年後の2018年5月、新妻秀規前文部科学大臣政務官の主催するセミナーに極地研副所長の榎本浩之教授が講演者として招かれ、「北極研究の現状と課題」と題し、海氷面積の減少などの北極域の変化や、地球環境と極域のかかわり、人工衛星による海氷の観測技術などについてお話しました。そのセミナーには宇宙航空研究開発機構(JAXA)で要職を歴任した寺門邦次(てらかど・くにつぐ)氏が参加しており、寺門氏は宇宙と極地の関係に興味をもたれ、知り合いであった渡辺氏に小惑星の名前として「Kyokuchiken(極地研)」と名付けることを提案しました。この提案を受けて円館氏・渡辺氏は小惑星センターに命名を申請し、それが認められ、極地研の名がつくことになりました。

小惑星「(7773)Kyokuchiken」はややつぶれた楕円軌道をもち、太陽の周りを4.49年かけて1周しています(図2)。直径は反射率から12km程度と推定され、小惑星の中では比較的大きな部類に入ります。

図2:「(7773)Kyokuchiken」の軌道図。提供:渡辺和郎氏。

なお、今号のMPCsには、「(7773)Kyokuchiken」のほかにも127の小惑星の名前が発表されています。その中には、アニメ映画『君の名は。』に登場する架空の地名「糸守」からとった「Itomori」という小惑星もありました。

極地研は南極隕石の研究やオーロラの観測など、宇宙とのつながりが強い研究所です。今回、小惑星に極地研の名が付いたのは意義深いことです。

謝辞

最後になりましたが、小惑星を発見し、命名を申請してくださった円館金氏、渡辺和郎氏、命名を提案してくださった寺門邦次氏に深く感謝いたします。

ページの先頭へ