北極・ニーオルスンに新たな観測施設を開設しました
2019年9月27日
国立極地研究所
国立極地研究所は、北極域のニーオルスン(ノルウェー)に新たな観測施設を開設しました。今月10日には、開設記念式典とワークショップを開催しました。
ニーオルスンの新観測施設
極地研はこのたび、北極・ニーオルスン(Ny-Ålesund、ノルウェー・スバールバル諸島スピッツベルゲン島、北緯78度55分、東経11度56分)に新たな観測施設を開設しました。ニーオルスンは人が定住している世界最北の場所です。
極地研は1991年4月、北極域では日本で初めてとなる常設の観測施設をニーオルスンに設置し、以来約30年、温室効果ガスや大気中エアロゾルの連続観測、北極域の生態系調査などを継続してきましたが、長年の使用により施設の老朽化が進んでいました。そこで、2017年にノルウェー政府の協力のもと、それまでの施設に代わる新たな施設を整備することを決定、建設を開始し、2019年3月に竣工、その後、ニーオルスンを管理するキングスベイ社(ノルウェー)と極地研が新しい施設の使用契約を締結し、4月から運用を開始しました。
また、2019年9月10日には、新観測施設の開所を記念した式典とワークショップを、現地で開催しました。日本からは、北極のフロンティアについて考える議員連盟の新藤義孝副会長(衆議院議員)と伊藤忠彦事務局長(衆議院議員)が出席されました。開所式典では、新藤議員のご挨拶の後、新しい施設に掲げる銘板の除幕式と施設視察、記念写真撮影などが行われました。ワークショップでは、ニーオルスンで活動する日本、ノルウェー、英国、ドイツの極域研究機関の代表者からこれまでの日本を含む各国との観測協力の歴史、最新の北極研究の取り組みやデータ共有の意義などについて講演があり、北極研究における国際連携の重要性について共通認識を深めました。新観測施設は、国立極地研究所の共同利用施設として全国の研究者や海外の共同研究者が利用することになります。
ワークショップ会場での記念撮影
リンク
ニーオルスン新観測施設開所記念式典およびワークショップの概要
※時刻はすべて現地時間
開所式典
日時:2019年9月10日(火) 13:00~13:50
会場:Kings Bay Veksthus(キングスベイ・ヴェクストゥス、※新たな観測施設の現地での呼称)
新藤義孝議員のご挨拶
銘板の除幕。左から、Bjørn Midthun氏、Per Erik Hanevold氏、Ole Arve Misund氏、新藤義孝議員、伊藤忠彦議員、中村卓司極地研所長。
新観測施設に掲げた銘板
ワークショップ
日時:2019年9月10日(火) 14:00~16:30
会場:キングスベイ共用講堂
主催:国立極地研究所、ノルウェー極地研究所
参加人数:約60名(ニーオルスン滞在中の各国研究者等)
プログラム:
14:00-14:10 開会挨拶
中村卓司(国立極地研究所長)
Ole Arve Misund氏(ノルウェー極地研究所 所長)
14:10-14:35 来賓ご挨拶
新藤義孝 衆議院議員(北極のフロンティアについて考える議員連盟 副会長)
Bjørn Midthun氏(ノルウェー外務省北極圏資源局)
伊藤忠彦 衆議院議員(北極のフロンティアについて考える議員連盟 事務局長)
Per Erik Hanevold氏(ノルウェー・キングスベイ社 ダイレクター)
14:35-15:15 基調講演
Ole Arve Misund氏(ノルウェー極地研究所 所長)
榎本浩之(国立極地研究所 副所長)
15:15-16:15プレゼンテーション
Nicholas Cox氏(英国南極調査所、前NySMAC議長、英国基地リーダー)
Philipp Fischer氏(ドイツ・アルフレッドウェーゲナー極地海洋研究所 海洋調査センター長)
Jack Kohler氏(ノルウェー極地研究所 上級研究員)
Dariusz Ignatiuk氏(SIOS Knowledgeセンター 科学統合・データ部門長)
16:15-16:25 質疑
16:25 閉会挨拶
中村卓司・極地研所長の挨拶
Ole Arve Misund・ノルウェー極地研所長のスピーチ
新藤義孝議員のご挨拶
伊藤忠彦議員のご挨拶
Philipp Fischer博士によるプレゼンテーション
ワークショップ会場全景
ニーオルスン新観測施設の概要
開設
2019年4月
所在地
ノルウェー スバールバル諸島ニーオルスン(北緯78度55分、東経11度56分)
ニーオルスンの位置
ニーオルスン主要部
ニーオルスンの気候(2018年)
平均気温:3月(最寒月)-11.8℃、7月(最暖月)+6.2℃(気象庁HP内「世界の天候データツール」の数値より算出)
ニーオルスンについて
ニーオルスンには日本に加え、ノルウェー、ドイツ、イギリス、スウェーデン、フランス、イタリア、中国、韓国、オランダ、インドの計11か国が観測施設を設置し、研究観測活動を行っている。各種の施設・設備はキングスベイ社(Kings Bay A/S, KB)によって管理されており、食堂、売店、ホテルなどもある。
観測については、ニーオルスン観測調整会議(Ny-Ålesund Science Managers Committee, NySMAC)のもとで、各国が相互に協力・連携し実施している。
設備
機材室
木造2階建て(屋上デッキ付)、延べ床面積493m2、建物内には観測室、実験室、ミーティング・リビングルーム、倉庫、ゲストルーム10室などが備えられている。日本のほか、キングスベイ社が管理する共用施設として各国の研究者が利用する予定である。
各室の配置(新観測施設を横からみた図)
※2020年3月までに、これまでの観測施設からの機器移転等を完了させ、新しい観測施設に完全移行する予定。
ニーオルスンで実施されている主な研究観測
観測データの例:上段から二酸化炭素、メタン、酸素の各濃度の経年変化。赤:ニーオルスン、青:南極・昭和基地
○雲、エアロゾル観測
・雲の構造と放射特性
・ブラックカーボン測定
○温室効果ガスモニタリング
・CO2、メタンの連続測定
・O2/N2比の連続測定
〇陸域生態系変動研究
・温暖化が陸上炭素循環に与える影響評価および将来予測
・植物病原菌の地理分布・分類・生理生態研究
〇その他、気象観測、超高層大気観測等を実施