大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

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研究成果

太陽系最古の火山岩を発見!

2021年3月25日
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国立極地研究所の山口亮准教授を含むフランスと日本の国際共同研究チームは、アルジェリアで発見された安山岩質隕石「Erg Chech 002」(EC 002、図1)が、年代既知の隕石や岩石の中で最も古い火山岩であることを明らかにしました。

研究チームがこの隕石の化学組成を分析したところ、火山岩の一種の安山岩であることが分かりました。さらに、年代測定によって、EC 002は今から45億6500万年前、つまり、太陽系誕生の直後(誕生の225.5万年後)にできたことが明らかとなり(注1)、EC 002がこれまでに年代が知られている隕石や岩石の中で最も古い火山岩であることが判明しました。

本成果により、EC 002のような安山岩質溶岩が、太陽系のごく初期に微惑星や原始惑星の表面に普遍的に存在していた可能性が示されました。この成果は、アメリカの学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)に掲載されました。

図1:(左) EC 002。(右)EC 002の偏光顕微鏡写真

研究の背景

太陽系誕生直後、塵が集積し、微惑星や原始惑星が生まれました。これらは、のちに地球や火星などの大きな惑星の原材料物質となった天体です。微惑星や原始惑星の一部は、太陽系初期にあった短寿命核種(アルミニウム26など)の壊変による熱で内部が溶融し、地表に溶岩が噴出することで、火山岩からなる地殻に覆われたと考えられています。これまでの研究では、この地殻を構成する岩石は、火山岩の中でも、ケイ素が比較的少なく鉄やマグネシウムに富む玄武岩質であるとされていました。

しかし、最近の研究で、太陽系の原材料物質を溶融させると、玄武岩ではなく、よりケイ素に富む溶岩(安山岩)ができるということが分かってきました。安山岩は日本でも噴出する溶岩の多くを占める、地球上ではありふれた岩石ですが、隕石としてはほとんど発見されておらず、これまで数個見つかっているのみでした。そのため、微惑星や原始惑星を覆う地殻が玄武岩であったのか安山岩であったのかについては議論が分かれていました。

成果の内容

2020年5月、アルジェリア南部のErg Chech sand seaで独特な緑色の結晶を含む多数の隕石が見つかり、Erg Chech 002(EC 002)と命名されました。研究グループはEC 002を入手し、この隕石の組成や形成年代を分析しました。

化学組成の分析の結果、EC 002は玄武岩ではなく、比較的ケイ素に富んだ安山岩であることが分かりました。次に、短寿命核種(アルミニウム26)を用いた放射年代の解析から、溶岩が固まった年代を特定したところ、45億6500万年前であることが明らかになりました。これは、太陽系の誕生直後(誕生から225.5万年後)であり、EC 002が、これまでに年代が知られている隕石や岩石の中で最も古い火山岩であることが判明しました。さらに、詳細な年代データの解析から、溶岩の発生から噴出まで数十万年要したことも分かりました。これは、安山岩の溶岩は粘性が高いため流動性が低く、地表への噴出まで非常に時間を要したためだと説明することができます。
また、岩石組織や鉱物組成の解析の結果からは、次のような変化を経て溶岩が固化したことが分かりました。

①はじめに、溶岩は1200℃から1000℃まで1年に5℃くらいのペースでゆっくりと冷却された。これは厚さ数mの溶岩の冷却速度である。

②次に、温度が1000℃を下回ったくらいの時期から急冷(1日あたり0.1℃から1℃以上)が始まった。これは原始惑星に隕石が衝突したことで、溶岩が地表に放出され急冷されたためだと考えられた。

考察と今後の展開

本成果は、EC 002のような安山岩質溶岩が、太陽系の初期に微惑星や原始惑星の表面に普遍的に存在していた可能性があることを示しています。しかし、安山岩質の隕石はこれまで稀にしか回収されておらず、また、EC 002の分光学的特徴を持つ小惑星は現在のところ見つかっていないことから、現在の太陽系には安山岩は非常に少ないと考えられます。これは、太陽系初期の惑星に存在した溶岩が衝突により破砕され、ほかの天体の原材料になったためであると考えられます。

EC 002のような太陽系誕生直後の火山活動の状態を残す隕石を研究することで、今後、さらに太陽系の進化について理解が深まることが期待されます。また、このような希少な隕石は、太陽系初期のプロセスを解明するための鍵になることが多く、隕石探査によって隕石を広く採取し、多様性を確保することは太陽系進化の研究において非常に重要です。

注1: ここでの「太陽系誕生」は、太陽系で最初の固体物質が形成された事を指す。

発表論文

掲載誌: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
タイトル:A 4565 Myr old andesite from an extinct chondritic protoplanet

著者:
 Jean-Alix Barrat(ブルターニュ・オキシダンタル大学、フランス)
 Marc Chaussidon(パリ大学、フランス)
 山口亮(国立極地研究所 地圏研究グループ 准教授)
 Pierre Beck(グルノーブル・アルプ大学、フランス)
 Johan Villeneuve(ロレーヌ大学、フランス)
 David J. Byrne(ロレーヌ大学、フランス)
 Michael W. Broadley(ロレーヌ大学、フランス)
 Bernard Marty(ロレーヌ大学、フランス)
DOI:10.1073/pnas.2026129118
URL:https://www.pnas.org/content/118/11/e2026129118
受理原稿公開日:2021年3月16日(オンライン掲載)

研究サポート

本研究の一部はJSPS科研費(JP19J00160)、および、国立極地研究所プロジェクト研究KP307の助成を受けて実施されました。

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国立極地研究所 広報室

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