大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

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(参考資料4)

観測隊無人航空機の運用指針(南極地域観測隊安全対策指針集より抜粋)

2018年10月25日制定
2019年5月20日改訂

4.観測隊無人航空機の運用指針

4-1. 適用範囲

本指針は、南極地域観測隊が南極地域に持込む無人航空機の運用に適用する。
※観測隊員が外国基地等において運用する場合は、当該国の定める指針に従うこと。また「しらせ」艦上での飛行については、艦長と観測隊長との協議による。

4-2. 無人航空機の定義

人が乗ることができない機体重量が200g以上の飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるものと定義する。(改正法2条の22)

4-3. 南極地域に持ち込む無人航空機等の情報と事前手続き等

(1)南極地域観測隊は、当該隊が南極地域に持ち込む無人航空機等の製造元、機種、サイズ、重量、担当隊員、使用目的についての情報を取りまとめて、出発前に南極観測安全対策常置分科会に提出すること。
(2)持ち込む無人航空機等が輸出規制品に該当する場合は、許可を受けること。
(3)無線機器は技術基準適合証明マークあるいは認可を受けた機器、その他法令に合致したもの以外は使用しないこと。(電波法第4条)
(4)製造品等、既製品でない機材に関しては国内での飛行が認められ、かつ運用実績があることを条件とする。
(5)南極地域観測隊では隊員がレクリエーション目的で無人航空機を飛ばすことを禁止する。

4-4. 操縦者の要件

無人航空機の制作・製造・販売に関わる団体等による講習会等を受講していること。或いは、10時間以上の操縦時間を証明する資料が提出できること。

4-5. 飛行できる場所・高度と飛行方法など

航空法(平成27年9月4日改正)を順守し、以下の範囲で飛行を行うこと。
(1)飛行高度の制限は、機体の仕様が定める高度とする。(図1の(A))
(2)基地建物、燃料タンク・配管、各種観測機器、各種アンテナ(図1参照)の上空
(図1の(B))で飛行させないことを原則とする。これらの空域で飛行する場合は、隊長等と安全面の協議を行った上で、隊長等から飛行許可を受けること。なお、飛行禁止区域図については、別途明示する。
(3)飛行は日中のみ(日の出から日没まで)とする。(改正法132条の2の一)ただし、白夜の期間については、日の出前・日没後であっても目視で安全に飛行できる明るさが十分あるときは、この限りではない。
(4)無人航空機等および遠隔操縦装置から発する電波が、通信機器や観測機器に影響を及ぼさないことを確認すること。
(5)気象ゾンデなど観測機器の飛揚(放球)する時間の前後30分間は飛行させないこと。
(6)観測隊ヘリコプター、自衛隊ヘリコプターが飛行している間は飛行させないこと。
(7)DROMLAN航空機が、昭和基地又はS17に離着陸あるいは付近上空を通過する予定時刻の前後1時間は、飛行させないこと。
(8)飛行中の機体の安全が常時操縦者から目視で確認できる場所でのみ飛行させることを原則とする。(改正法132条の2の二)目視確認できない場合で飛行させる場合は、安全面の措置をした上で、隊長等の許可を受けること。
(9)人や建物、車両等から30m以上の距離を保って飛行させること。(改正法132条の2の三)
(10)多数の人が集まっている場所の上空を飛行させないこと。(改正法132条の2の四)
(11)爆発物など危険物を輸送しないこと。(改正法132条の2の五)
(12)無人飛行機から物を投下しないこと。(改正法132条の2の六)


図1 飛行させてはいけない範囲

4-6. 飛行計画と報告

(1)操縦者は、前日までに別途定める書式に従って隊長等に飛行計画の申請をおこない、許可・承認を得なければならない。
(2)操縦者は、飛行開始の30分以上前に飛行実施の旨を隊長等に連絡する。また、飛行終了後直ちに隊長等に報告すること。
(3)操縦者は、別途定める書式に従って飛行記録を残し、隊長等に提出すること。隊長等は、帰国後に記録を南極観測安全対策常置分科会に提出し、同分科会は保管すること。外出禁止令発令時にいる建物からの移動は原則禁止。万が一、移動が必要になった場合は越冬隊長と協議する。

4-7. 飛行させる際の注意事項

(1)無人航空機を飛行させる際の基本的な体制
・飛行させる際には、安全を確保するために1名以上の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
・補助者は、飛行範囲に人が立ち入らないよう注意喚起を行う。

(2)離発着場所周辺での注意喚起
飛行をおこなう場合、離着陸場所から水平距離30メートル以上離れるよう周囲に注意喚起する。

(3)緊急時を想定し事前のルート確認を確実に行う。

(4)操縦者は、疲労などで操作や意識の集中が出来ない状態での操縦はしないこと。また酒気帯び状態での操縦も行わないこと。

(5)無人飛行機は風の影響を受けやすいことから、操縦者は飛行前には安全な飛行ができる状態であるか次の項目について確認を行う。
・安全に飛行できる気象状態であるか
・現場の平均風速が5m/s以下か
・機体に損傷や故障はないか
・バッテリーの充電や燃料は十分か

(6)操縦者は、周辺に障害物のない十分な空間を確保して飛行させるよう心がける。

(7)操縦者は、安全に飛行させるため、製造者の取扱説明書に従って、定期的に機体の点検・整備を実施する。

(8)走行中の車両から操縦しない。

4-8. 事故報告

対人事故、対物事故が発生した場合には、直ちに隊長及び当該責任者に報告すること。もし負傷者がいる場合は、速やかに応急処置を行い、医療隊員に連絡する。また、落下した機体は放置せず必ず回収すること。ただし、海氷上などに落下し回収が困難な場合は、回収せず隊長に報告し協議する。

4-9. その他

本指針の内容は法規制などの変更、技術の進化などに応じ適宜改訂することができる。

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