ようこそ!南極の海の生きものの世界へ

なんきょくの うみ に すむ いきものたち

マイナス1.9℃近くになると海水は凍りはじめます。そんな海氷の海、南極海でクジラやアザラシ、ペンギン達はなにを食べて生きているのでしょうか?実は南極海には豊かな生物の世界があり、中でもプランクトンが多くの動物の餌として生態系を支えています。

今日は暑い日本から離れて、そんな海氷の海の生きものの世界をのぞいてみましょう。

南極の動物プランクトンたち 生体動画

オキアミのなかま Euphausia ユウフォージア  superba スーペルバ  和名 ナンキョクオキアミ

植物プランクトンなどを食べ、クジラ、アザラシ、ペンギン、海鳥、魚、イカの餌となる南大洋生態系の鍵種である。養殖魚や釣りの餌としてヒトも利用している。世界で一番大きなオキアミ。エビによく似ているが、羽毛状のえらが背甲の外に出ていることで区別される。胸部の6本の肢(あし)は細かい毛がびっしり生えている。これを使って、海水中の植物プランクトンを集めて口に運ぶ。腹部の5対の肢(あし)を動かし、前に泳ぐ。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

ヨコエビのなかま Themisto テミスト  gaudichaudii ガウディカウディ

小さなプランクトンなどを食べる。大きい魚や海鳥などに食べられる。胸部の7対の肢(あし)は様々な形をしており、特に5番目の肢(あし)がとても長い。腹部の3対の肢(あし)を動かし前に泳ぐ。生きているときは体表近くに黒や赤の色素胞を持ち、姿を見えにくくして身を守っている(カウンターシェーディング効果)。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

カイアシのなかま Calanus カラヌス  propinquus プロピンカス

植物プランクトンなどを食べ、大きい動物プランクトンや魚に食べられている。頭部の肢(あし)を動かして水流を起こし、海水中の植物プランクトンを口に運んで食べる。オール(櫂(かい))のような形をした胸部の5対の肢(あし)を使って泳ぐ。腹部には肢(あし)がない。カイアシのなかま全体の個体数は動物プランクトンの中で最大である。「海のコメ」と呼ばれることもある。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

カイアシのなかま Euchirella ユウキレラの一種 sp.

主に水深200mより深い海に生息する、Aetideidae科の雑食性カイアシ類の一種。映像は未成体の個体。未成体は付属肢に羽毛状の刺毛を持つが役割はよく分かっていない。映像では付属肢を動かして遊泳する様子が分かる。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

カイアシのなかま Lucicutia ルシクチアの一種 sp.

主に水深200mより深い海に生息する、Lucicutiidae科の雑食性カイアシ類の一種。映像では複数の付属肢をそれぞれ動かして遊泳する様子が分かる。深い水深に生息するカイアシ類のなかまには、体色が赤い種がしばしば見られる。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

貝形虫のなかま Gigantocypris ギガントキプリスの一種 sp.

貝形虫と呼ばれる甲殻類の一種。二枚貝のような殻の間に体がある。映像では付属肢を使って遊泳する様子が分かる。Gigantocypris属は体長約30mmと貝形虫の中でも大型で、南極でも深い水深に生息する。金色に光るパラボラ上の集光効率の高い大きな2つの眼を持つ。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

翼足(ヨクソク)のなかま Clione クリオネ  antarctica アンタークティカ

同じ翼足のなかまであり殻を持つLimacina helicina(ミジンウキマイマイ)だけを食べると言われており、大きい魚やクジラに食べられる。貝殻をもってはいないが、巻貝のなかまである。翼足と呼ばれるもともとは足であった部分をパタパタと動かして泳ぐことから、流氷の天使「クリオネ」として知られている。頭部からバッカルコーンという触手を出して、好物のミジンウキマイマイを捕らえ、食べる肉食性プランクトンである。生きているときは体の中の内臓の部分以外は透明である。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

翼足(ヨクソク)のなかま Limacina リマシナ  helicina ヘリシナ

一生を海の中で漂って過ごす巻貝の一種。ミジンウキマイマイと呼ばれる。映像で分かるように、翼足と呼ばれる足を文字通り翼のように羽ばたきながら泳ぐ。クリオネの主な餌になっていると考えられている。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

オヨギゴカイのなかま Tomopteris トモプテリスの一種 sp.

肉食性。ヤムシ、サルパのなかまや魚の幼生などを食べる。体の一節から左右の側面に2本のいぼ足が出る。いぼ足の先端は2つに分かれ、それぞれに薄い膜が備わっているため、水をかきやすい形をしており、オールのように使って体をくねらせるように優雅に泳ぐ。多毛類は海底にすむ種類が多いが、オヨギゴカイのなかまは一生をプランクトンとして過ごす。(撮影:JARE60 海鷹丸南極海航海)

サルパのなかま Salpa サルパ  thompsoni トンプソニ

海水を吸い込んで、エサの粒子(主に植物プランクトン)を濾(こ)して食べる。体の大半が透明なゼラチン質でクラゲのようにも見えるが、実は魚に近いホヤのなかまである。無性世代と有性世代を交互に繰り返す。無性生殖で生物量が爆発的に増えて大群となることが知られている。世界中の海に生息し、特に南極海で個体数が多い。(撮影:JARE43 タンガロア号南極海航海)

プランクトン樹脂封入標本セットとワークショップキットのご紹介

たくさんの方に南極海の動物プランクトンの実物標本を手に取って、自分の目で観察し、生きているときの写真や動画を見る体験を通して、遠い海氷の海の世界に棲む、さまざまな生き物たちを感じてもらいたいとの思いで、プランクトン樹脂封入標本セットやワークショップキットを作っています。教育関係者の方たちのご連絡をお待ちしています。

樹脂封入標本セットの貸し出しは生物資料室へ
seibutsu.shiryo@nipr.ac.jp

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