空気が乾燥している、水が不自由、強風が吹き荒れる、木造の部分が多い、およそ一年分の発電機燃料や調理用のLPGがあるなどの様々な理由で、一旦火災が起こると重大な結果をもたらす危険性が大きいことから、昭和基地では火災は野外活動の際の事故や気象遭難と同様に最も恐ろしい災害の一つになっています。今までにも幸い人命にこそかかわらなかったものの、実際に火災が発生したこともありました。外国基地では過去に火災によって複数の人命が失われたり、基地主要部が焼失して活動停止を余儀なくされた事例もあり、隊員は熱心に消火訓練に取り組んでいます。また、基地の中の各建物にはすべて消火器や防煙マスクなどが備え付けられており、消火器の総数は基地全体で約250本を数えます。
21日にはその消火訓練が行われました。この日は気象棟から火災報知機の発報があり、通報した気象隊員が熱傷を負って倒れている、消火器での初期消火が失敗し、本格消火に移行するという想定で訓練が行われました。
それぞれの隊員は全体の指揮と通信を担当する消火本部、現場指揮、筒先・ホース・ポンプ・電力・救助の各係からなる消火班、類焼を防ぐための破壊班、負傷者に対応する医療班、班や係の間の連絡をサポートし消火活動に専念できるようにする連絡班の役割のどれかが割り振られています。今回は54次隊として3回目の実地訓練にあたり、隊員たちもそれぞれの役割に慣れてきたようでおおむね順調に訓練は終了しました。
我々越冬隊30名のうち誰一人として国内で消防活動を専門にしていた隊員はいませんが、万が一基地で火災が起こった時にはみんなで力を合わせて消火活動を行わなければ、大事な観測データを失うだけではなく生命にもかかわります。国内での準備期間中から消防訓練を行い、昭和基地に来てからも自衛消防団を組織して発火場所や火災の状況・負傷者の状態などいろいろな場面を想定したシナリオを作り、月に一度必ず消火訓練を行って緊急時の備えと防火に対する意識を高めています。
|