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プロジェクト成果
戦略目標①

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先進的な観測システムを活用した北極環境変化の実態把握

北極域の温暖化の影響は、北極域にとどまらず、全球に及びます。しかし、温室効果気体の放出源・吸収源の分布、海氷減少の原因とその海洋生態系への影響、氷河・氷床の後退と海水準上昇や凍土の融解・荒廃などの実態把握やプロセスの解明がいまだ不十分です。このような観測データや科学的知見の不足は、将来予測の不確実性にもつながっています。このため、先進的な機器による大気観測、海洋・海氷相互作用の総合観測、氷河・氷床変動要因の把握、温暖化による陸域、生態系への影響評価など、国際協力と継続的な研究による正確な実態把握が必要不可欠です。そこで戦略目標①として、先進的な観測システムを活用し、現地観測に基づく環境変化の実態を把握することを目指しました。

目標達成に向け、先進的かつ高精度の観測装置や衛星観測アルゴリズムが開発され、観測精度の向上や従来観測が難しかった場所や時期における実態解明が進みました。さらに独自に開発した数値モデルを利用した研究や大規模なモデル計算が有効に機能し、広域における環境変化の再現性が向上し、多くのメカニズム解明につながりました。

特筆すべき成果としては、北極域のブラックカーボン(BC)濃度測定の標準化の基礎の確立、20世紀前半の北極温暖化と中頃の寒冷化の要因解明、太平洋側北極海の公海にまで忍び寄る低酸素化・酸性化の解明、北極海の海氷減少と気温上昇に及ぼす暖かい河川水の影響の解明、暗色化をもたらす微生物モデルの開発および全球モデルによる赤雪現象の再現、永久凍土分布の将来変化予測精度の高度化などが挙げられます。

これらの成果に共通することは、北極温暖化の影響がさまざまな環境変動をもたらし、それらが連鎖して新たな環境変化を起こしている点です。その過程で、新たなフィードバックメカニズムや現象も見いだされました。一方、北極温暖化とそれに伴う環境変化は、これからも続くことが予想されます。今後の課題としては、進行する北極温暖化に対応した大気環境の変化、海氷融解をはじめとした海洋環境の変化、氷床の質量損失と海水準の上昇、生態系の変化や凍土融解と温室効果気体濃度へ与える影響などがあり、その研究を推し進めるためには継続的な実態把握と監視が必要です。新しい観測手法の開発と各観測から得られた物理・化学・生態の各素過程におけるメカニズム解明と数値モデル化を進め、将来予測精度の向上と適応策や緩和策と連携することが求められます。

戦略目標の背景や概要

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