気象気候予測の高度化
戦略目標②としては、従来よりも長期間に及ぶ、従来よりも信頼性の高い気象気候予測の実現を目指しました。具体的には、1)北極域に起因する北極域内外での極端気象現象のメカニズムを明らかにし、その発現に関する実用的な指標および気候温暖化進行に伴う将来展望を提示すること、2)北極域気候プロセスの表現向上を通して数値気候モデルを高度化し、北極域および全地球規模における日々から数年の時間スケールに対する気象気候海況予測の精度向上や予測期間延長につなげること、3)北極域気候における温暖化進行や温暖化増幅メカニズムを解明し、その結果として現れる数十年を超える時間スケールでの気候変化に関する理解を深めることを目的としました。
目標の達成に貢献した主な成果として、1)に対しては、寒冷渦指標の開発と気象庁予報解析への実装、日本海寒気団収束帯(JPCZ)のメカニズム解明、北半球中高緯度地域の熱波発生頻度・強度の高まりにおける要因解明などがあります。2)に対しては、全球気候モデルにおける北極海氷の再現性向上、雲の太陽放射への影響に関する気候モデルの再現性向上、雪氷面暗色化等の詳細過程を取り入れた雪氷モデルの開発、気候モデルにおける積雪過程の改善、波浪‐海氷相互作用の実態解明と予測モデルの高度化、初期値化のための海氷厚推定方法の確立など、3)に対しては、熱・水蒸気の輸送効果による北極域の温暖化・湿潤化過程の解明、北極海氷減少による中緯度寒冷化に関する定量的な説明、北極温暖化による中緯度降水増加の要因解明、北極海の雲量と海氷の相互影響の解明などが挙げられます。
気候変動には強制変動(温室効果気体の増加による温暖化など、原因と結果が明確なもの)と内部変動(北極振動など、気候内要素の相互作用が自律的に作り出すもの)という異なる要因があり、予測において重要となる要素はそれぞれ異なります。内部変動が支配的となる期間(10年程度以下)の気候予測の精度向上や期間延長においては、予測の初期値となる観測データの取得と、そのデータを予測モデルに適切に取り込むための同化手法について、特に研究開発が求められます。本プロジェクトでは海氷厚データセットや海氷データ同化手法の面でそれを進めましたが、今後は、そのさらなる高精度化・高度化とともに、陸上および海氷上の積雪深等に関するデータセット整備やデータ同化手法開発が求められます。
戦略目標の背景や概要
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