北極域の持続可能な利用のための研究成果の社会実装の試行・法政策的対応
北極域研究は社会科学分野でも急速に重要かつ新たな研究領域として確立してきました。中心となる研究課題は、北極域における独特かつ複雑な国家間関係の包括的・多角的な検討と、変容する北極の持続可能性を支える国際法制度のあり方の検討です。研究成果の社会実装という観点では、北極域の持続可能性に関する課題について、自然科学との連携に基づく制度的解決策の検討が求められます。
戦略目標④では、多分野にわたる北極社会科学研究の深化・重層化を念頭に、日本の北極政策の実施・展開を支える学術的な基盤の確立と、北極域において必要とされる適応策の実施に日本の北極域研究の自然科学的知見を結び付けるための体制の構築を目標としました。具体的には、1)北極国際法政策に関する実証研究に基づき、変容する北極域の持続可能性を支える強靭な国際制度の設計図を示し、主に日本のステークホルダーが北極に関する課題に取り組む際に参考となる形で研究成果を提供すること、2)北極域における複雑な政治プロセスを総合的に把握するための研究を推進し、国際的な議論と制度形成の根底にある多様なステークホルダー間の対立と調整のあり方を解明すること、3)経済学的手法を用いた研究も含めて、北極政策の諸課題において日本のリーダーシップが発揮できるよう、北極域の持続可能な利用のために必要な法政策対応のあり方を総合的に明らかにしていくことを目指しました。
戦略目標④のもとでは、国際制度における科学的知見の取り込みのあり方と、ロシアのウクライナ侵攻が北極域に及ぼす影響という2つの横断的視点に関する研究成果が多く得られました。プロジェクトを通じて得られた戦略目標④に寄与する研究成果は、北極先住民族、北極圏国の環境・経済・社会、および北極海の国際的ガバナンスの3つのテーマに関わるものに大きく整理することができ、このうち2つ以上に関わるものもあります。これらの中には、社会科学の複数分野の連携による成果や、社会科学と自然科学との連携を通じて得られた成果も含まれています。
研究成果の社会実装に関しては、主に政策決定者やステークホルダーに対し、さまざまなトピックに関する専門的な分析に基づくブリーフィングペーパー・シリーズの発刊、分野を超えた産官学の対話を課題解決につなげる「北極域実践コミュニティ」の主宰を通じて取り組みました。中央北極海無規制公海漁業防止協定の実施のための科学的知見の提供など、現実の法政策プロセスへの研究成果の反映も実現しました。
戦略目標の背景や概要
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