人材育成・研究力強化
本プロジェクトでは、これまでの北極域研究プロジェクト(GRENE北極気候変動研究事業(GRENE北極)、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)で実施してきた人材育成メニューを発展・拡充し、新たに重点課題として若手人材の育成や研究力強化を目的とする以下の4つのプログラムを実施しました。
1)海外交流研究力強化プログラム
2)若手人材海外派遣プログラム
3)北極域研究加速に向けた研究計画の公募
4)国際若手研究者交流プログラム
プロジェクト開始時点で、本課題は1)~3)の3つのプログラムで構成されていましたが、2021年5月に東京で開催された第3回北極科学大臣会合(ASM3)の共同声明を受け、2022年度より4)が追加となりました。2)はこれまでの北極域研究プロジェクトでの取り組みを発展させたものですが、それ以外は本プロジェクトから新規に開始したものです。いずれのプログラムも北極域研究に関わる人材の育成・拡大を目的として、プロジェクト内の募集でなく広く一般公募を行い、実施計画を選定しました。2020年より急拡大したCOVID-19のパンデミックは、本課題の実施に大きく影響しました。特に1)は、国内と海外の研究者の直接的な交流を主眼としていましたが、海外渡航や日本入国時の厳しい規制によりプログラム開始初年度の2021年度はほぼすべての派遣・招へい計画が中止となり、会合はオンライン開催に変更となりました。2)についても、2020年度に予定していた採択者の派遣を中止またはオンラインによる学会参加に切り替えることになりました。3)については、2021年度開始計画のうち2件は海外での現地観測を予定していましたが、渡航不能な状況であったため、次年度に向けた国内での予備観測や過去に採取したサンプル分析に計画を切り替えました。
重点課題①は、本プロジェクトから新たに開始したプログラムが多いことに加え、COVID-19のパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻など国内外の厳しい制約を受けましたが、国内のみならず海外も含めた若手研究者や学生の人材育成に大きな成果がありました。過去のプロジェクトで支援を受けた当時の若手研究者や学生が現在の北極域研究において中心的な役割を果たし始めていることから、本プログラムで支援を受けた若手研究者や学生も着実にキャリアを積んでいくことが期待されます。今後の課題としては、プログラムに参加した若手研究者や学生のキャリアパスのフォローアップ調査を継続するとともに、プログラム横断型の交流/報告会の開催などの成果発表や意見交換の機会を設けるなど、若手人材のキャリアパス形成支援のための取り組みが求められます。なお、本課題は一般公募により広く実施計画を募集しましたが、結果的に採択者の大半はプロジェクト関係者となりました。このため研究課題と連携したシナジー効果が得られた一方、今後、我が国の北極域研究コミュニティの拡大を目指すためには、公募の周知方法の工夫などにより幅広い分野や所属機関からの応募者を募る方策の検討が課題といえます。

重点課題の背景や概要
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