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ASSW2022・IASC社会人間作業部会会合参加報告

報告者:岸上 伸啓(国立民族学博物館/社会文化課題)
柴田 明穂(神戸大学/国際法制度課題)

国際北極科学委員会(IASC)の社会人間作業部会(Social and Human Working Group、略称SHWG)の年次会合は、ノルウェーのトロムソのASSW2022において現地参加・オンラインの併用で2022(令和4)年3月27日(日)に開催されました。この会合には、柴田 明穂(神戸大学/ArCS II国際法制度課題 研究課題代表者)および岸上 伸啓(人間文化研究機構・国立民族学博物館/ArCS II社会文化課題 研究課題協力者)が参加しました。また、公開会合には近藤 祉秋(神戸大学/ArCS II社会文化課題 研究課題分担者)も出席しました。

公開会合の冒頭で、あらたにSHGWの代表に就任したカナダ・アルバータ大学のSusan Chatwood博士の挨拶がありました。その後、いくつかの報告がありました。最初に、SHGWが資金援助している、極北地域における先住民との知識の協働生産に関するプロジェクト(“CO-CREATING knowledge for and in the Arctic”)、極域関連の調査者と教育者のための実践的なハンドブック作成プロジェクト(“Polar Educators Initiative”)、北極地域におけるリプロダクティブ・ヘルス関連プロジェクト(“The Contribution of the Reproductive Health and the Quality of the Arctic Environment”)、自然科学分野での先住民との協働のための方法論開発プロジェクト(“Indigenous Methodology in Collaborative Arctic Science)の国際共同プロジェクトの進捗報告がありました。次に、SHGWに関連する活動として、2021年6月に開催されたICASS10、気候変動が漁業に与えた諸影響を解明するMarine SABRES、極端な環境下で仕事をする動機と適応に関するプロジェクト、イヌイットの伝統的な知識の重要性を強調するイヌイット・データ・主権プロジェクト(Inuit Data Sovereignty)の活動紹介が行われました。次に、極北科学調査協力の現状についてオーストラリア代表、アイスランド代表、米国代表、フランス代表、フィンランド代表、ノルウェー代表から報告がありました。上記以外に、ウクライナへのロシア侵攻問題ついてかなりの時間をかけて意見交換が行われました

各国代表の委員のみの非公開会合では、最初にGerlis Fugmannが、2022年のIASCメダルの受賞者はDalee Sambo Dorough博士であることほか、ASSW2023が2023年2月16日から24日にかけてウィーンで開催されること、ICARP IVが2025年に米国コロラド州ボールダーで開催されることなどIASC関連の報告を行い、質疑応答がなされました。質疑応答は、ウクライナへのロシア侵攻問題ついての意見交換へと発展し、現在、ロシアの大学や研究機関との国際的な研究協力の継続は難しいが、ウクライナ問題との関連で困難に直面しているロシア人研究者の研究や先住民を支援すべきだという意見などが出されました。

国際共同プロジェクトへの資金支援に関わる2021-22の決算案を確認した後、2022-23年のプロジェクトとして応募のあった10プロジェクト中、AGORAや持続可能性のための教育などの9プロジェクトを採択する案およびレビュアーによる採点に基づく予算配分案が提示され、質疑応答後、承認されました。

最後に、任期満了で今回をもってWGメンバーを退任するLassi Heininen(フィンランド)、Peter Schweitzer(オーストリア)、Gertrude Saxinger(オーストリア)、Beatrice Collignon(フランス)、Alexander Proelss(ドイツ)、Andrey Petrovra(アメリカ)らによる挨拶がありました。また、メンバーの交代に関して、デンマーク代表から2名がSHWGに参加していますが、グリーンランドを代表していないため、グリーンランド人研究者を加えたいとの提案があり、意見交換がなされました。これを受けて、座長のSuzan Chatwoodはこの提案を優先検討事項とすることを表明しました。

なお、H-MOSAiCに関する会合はこの非公開会合の終了後に開催されましたが、日本時間の午前2時からの時間帯であったため出席できませんでした。