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Polar Symposium 2024参加報告

報告者:榎本 浩之(国立極地研究所)

2024年2月22日、23日にモナコにて、アルベール2世財団と南極研究科学委員会(SCAR)、国際北極科学委員会(IASC)が共同で、極地変化に関する科学シンポジウム「北極から南極へ」の第2回目のシンポジウムを開催しました。海洋研究や教育に力を注ぎ、自らも極地を含む世界各地の海に出かけたモナコ・アルベール1世の考えを継承したアルベール2世によるPolar Initiativeの趣旨によるものです。

シンポジウムは、南北両極に共通する現象をより理解し、それが地球全体に及ぼす影響を特定し、適切な対応を提案することを目指して開催されました。会場となった海洋博物館に、アルベール2世大公、アイスランド・グリムスン前大統領、SCARよりJefferson Cardia Simoes副代表他、IASCよりHenry Burgess議長ほか事務局メンバー、その他にはアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所(AWI)、ノルウェー極地研究所(NPI)、英国南極調査所(BAS)やフランス、米国等からの極地研究関係者、WWF、NPOや、世界経済フォーラムWEF、Sami協議会、ジャーナリストなど120人ほどが参加しました。

会場の外観
会場の内観

アルベール2世大公は、開会の辞において、気候変動の前兆としての極地の重要性を強調され、国際的に共同で取り組むべき課題、若手育成、保全と経済活動についても述べられました。さらに、パネルディスカッション、ブレイクアウト・ディスカッションが行われました。

シンポジウムでは「今後10年間に向けた両極イニシアチブの開発とコラボレーション」「漁業、観光、鉱山などの人間活動の影響に関連した、極地における新たな課題に対する適応と緩和戦略」という、2つのテーマが掲げられました。

今後10年間にわたり、同期した国際的な取り組みの強化が訴えられ、国境を越えた協力を継続し発展させることの重要性や、極地研究の結果とその地球規模への影響に関する行動指向のコミュニケーションの促進といったことが提案、議論されました。これらは2032年の国際極年(IPY)、2025年の第4回北極科学計画会議(ICARP IV)につながる話題でもありました。

社会経済やツーリズムに関しては、南極と北極における関心や課題は異なります。北極圏におけるツーリズムは地域の文化の理解につながるものであり、地域の経済活動や訪れて接触を持つことの有効性が述べられました。先住民の文化や課題を理解するという観点があります。一方、南極グループの議論ではで、オーバーツーリズムとその防止に向けた教育やアウトリーチの必要性が話題に上がりました。

会議の様子

会議では、世界経済フォーラム(WEF)や北極経済評議会(AEC)の経済活動と極地への関与など、また複数の財団の研究や教育支援活動についても意見が交わされました。会議にはAssociation of Polar Early Career Scientists(APECS)から多数の若手研究者が招待されており、若手活動に関するフェローシッププログラムの授賞式も行われました。