2024年北極サークル総会 参加報告
報告者:榎本 浩之(国立極地研究所)
10月17日から19日までアイスランドのレイキャビクにあるハルパ・コンサートホール&カンファレンスセンターで開催された2024年北極サークル総会には、75カ国から2,500人以上が参加し、250以上のセッションでは700人以上の講演者が発表やパネル討論を行いました。
従来の総会のプレナリーおよびブレイクアウトセッションに加え、今年からPolar DialogueとBusiness Forumが企画され、別会場も準備されました。Polar Dialogueでは、各国の政府関係者を1名ずつインタビューしていくセッションも開催されました。本総会も11年目を迎え、会合の参加者やセッション数は増加していますが、パラレルに行われるセッションの数も増え、さらに今年は複数の建物を使ったことに加えて対面開催であったこともあり、参加できるセッションは一部のものに留まりました。今後、一部のパネルは記録動画の配信が期待されますが、それも全体から見ればわずかです。
報告者は下記の3つのセッションで登壇しましたが、Synoptic Arctic Surveyのセッションには日本からも海洋研究者約5名が参加していました。また、各国の北極担当大使が登壇された複数のパネルや、科学と外交の議論セッションにも日本から関係者が参加していました。
1. Responding to Arctic Climatic Changes Impacting Asia: Society and Collaborations
2. Achievements of Japan’s Arctic Cooperation
3. Polar Dialogue, Status of Antarctic
※1.のセッションはArCS IIが主催しました。
1.のセッションでは、ArCS IIが推進する北極の環境変動とアジアへの影響について話題を提起し、アジアの極地研究所の代表者が関連する活動を紹介し、会場からの質問にも答えながら、課題や今後の方向性を議論する場を持ちました。本セッションは、日本からの提案に対し、中韓印の極地研究所所長クラスの理解と協力を得て開催することができました。
本セッションの背景として、北極の急速な温暖化は、その地域の気象と環境に影響を及ぼし、さらにアジア(極東)に劇的な影響を与えていることを紹介しました。それに加えて、国家の科学投資と実施、その成果や今後の計画がどのようになっているかを紹介しました。日本と韓国からは、北極圏からアジアへの寒気流出に関する研究成果が紹介されました。日本からは寒冷渦の研究成果が気象予報を通じて社会で活用されている動きについても紹介しました。中国は、北極海や陸域での観測所設置や調査活動を報告し、インドは、気候変動が多くの人口が集中するインドへの影響を与えることを報告し、科学的理解や予測と社会の対応が緊急の課題であることに言及しました。会場からは、北極評議会との関係や、人材育成、データの共有についての質問があり、それぞれの国の取り組みを紹介しました。日本からは、北極評議会作業部会への取り組みや、人材育成の取り組み、若手の参加者の様子、データ公開の仕組みを紹介しました。
なお、総会の最後には今回から始まったPolar Dialogueの総括パネルが行われましたが、グリーンランドで日本人研究者との交流もあるMiyuki Qiajunnguaq Daoranaさんが若手代表として、プレナリーでのパネル議論に参加して、活躍しているのは印象的でした。