EN メンバーズサイト
ログイン

プロジェクト報告・成果

  1. HOME
  2. プロジェクト報告・成果
  3. 若手派遣報告
  4. コクガンの渡りを追ってオホーツク海北岸へ

コクガンの渡りを追ってオホーツク海北岸へ

2021年度第1回若手人材海外派遣プログラム参加者
澤 祐介(山階鳥類研究所 研究員)

我々の研究チームでは2016年より北極圏で繁殖し、日本で越冬するコクガンという渡り鳥を研究しています。長距離を季節的に移動する渡り鳥は、その渡りルート上で様々な脅威にさらされています。繁殖地である北極圏では気候変動による生息地の変化、中継地では過度な狩猟や開発による生息地の破壊などが代表的な脅威です。このような渡り鳥を保全していくためには、渡りルートを明らかにし、そのルート上の主要な生息地の特定と現地調査による生息地の状況把握が必須となります。これまで私たちは、日本で捕獲したコクガンを発信器で追跡することにより、渡りルートの解明を行ってきました。今回は、追跡により明らかになった中継地のひとつ、オホーツク海北岸のマガダン周辺の湿地において、コクガンの飛来状況や生息環境を調査しました。

今回の調査期間は、5月23日から6月6日。日本では夏日が続いていましたが、オホーツク海北岸は気温4度ほど。海にはまだたくさんの流氷が浮いていました。メインの調査地である、オラ湿地は水深5mほどの浅い潟です。干満差は約5mと大きく、大潮の干潮時には湿地内を歩くことができました。ここにはコクガンの餌となるアマモが豊富に生育しており、ニシンの産卵場にもなっています。湿地を歩くと、干潮時に取り残されたニシンの死体が散乱しており、それを数千羽のオオセグロカモメが漁る光景に圧倒されました。そんななか目当てのコクガンは、最大300羽ほどの群れを確認。干潮時には約50mほどの距離まで近づくことができ、採食行動までじっくりと観察することができました。

産卵後のニシンの死体が散らばるオラ湿地
オラ湿地で採食するコクガン

日本を含む東アジアのコクガンの越冬数は、約8,700羽と推定されています。そのうち、どれだけの個体が、オホーツク海北岸を通り、北極圏まで渡っていくのかはまだ正確にはわかっていません。今回の調査では、数羽から数百羽の群れをマガダン周辺の沿岸域約200kmの間で確認することができました。このような類似の環境は、マガダンから約400km西のオホーツク市周辺や、シェリホフ湾沿岸にもいくつかあるようです。今回の調査結果とあわせ、これらの地域の情報を集め、環境の解析を進めることで、オホーツク海北岸におけるコクガンの渡りの実態を明らかにしていきたいと考えています。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら