国際法制度課題における研究教育と若手人材海外派遣プログラムの連携の成果が、学術誌に掲載されました
執筆者:古畑 真美(神戸大学/国際法制度課題)
深町 康(北海道大学/重点課題①若手人材海外派遣プログラム)

ArCS II 国際法制度課題では、海洋課題と連携して、中央北極海公海無規制漁業防止協定に関する研究を行っています。2022年10月13-16日に行われた2022 Arctic Circle Assemblyでは“Japan’s Contribution to the Central Arctic Ocean Agreement: Science, Indigenous knowledge, Rule of Law”というセッション提案が採択され、実施段階に入った中央北極海公海無規制漁業防止協定につき、ロシア侵略後の状況変化も踏まえて、日本が科学的知見や国際法研究でいかなる貢献ができるか、科学的知見と先住民族の知識とをいかに統合して協定の実施に役立てるか、などにつき討議を行いました。

この研究成果を、神戸大学大学院国際協力研究科における大学院授業科目「International Polar LawⅡ」と「海外実習」とに有機的に連携させ、ArCS II若手人材海外派遣プログラムの支援を受けて、同研究科の修士課程院生3名をアイスランドに派遣しました。3名は10月12-13日に開催された第15回極域法国際シンポジウム(The 15th Polar Law Symposium, アイスランド大学)において中央北極海公海無規制漁業防止協定における暫定的保全管理措置について報告を行い、その経験に基づく記事を学術誌Current Development in Arctic Lawに投稿し、掲載されました。
さらに、院生達のレイキャビックでの体験は、11月から12月にかけて、ArCS II企画として実施した人材育成セミナー「科学者と前進させる国際交渉セミナー2022『北極域と科学外交の未来づくり』」に活かされました。このセミナーでは、北極科学協力協定や中央北極海公海無規制漁業防止協定を題材として、北極科学外交交渉における科学研究活動の役割について講義が行われました。最終回では、北極科学協力協定の締約国会合を想定して、各学生がそれぞれ締約国、常時参加者、北極評議会オブザーバーを代表し、同協定の実施に関する議長報告書案を交渉するというロールプレイが実践されました。こうして、神戸大学での大学院授業科目とArCS II若手人材海外派遣プログラムとの相乗効果が生まれました。

若手人材の育成においては、研究分野としての極域に関心をもつ学生の裾野を広げることが課題となるなか、今回の取り組みは、ArCS IIにおける北極国際法研究が大学院教育科目およびArCS II若手人材海外派遣プログラムを通じて修士課程学生による国際シンポジウムでの報告へと繋がった好事例と言えます。今後も、我が国における極域研究の持続的発展に向けて、ArCS II若手人材海外派遣プログラムを活用した若手研究者養成が期待されます。
関連リンク
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Hiroto Kogo, Rena Takezoe, Taichi Inai, Akiho Shibata, “Japanese Master’s Students Contributing to the Arctic Legal Studies through the 15th Polar Law Symposium” Current Development in Arctic Law, Vol.10 (2022), pp.87-90.
https://lauda.ulapland.fi/handle/10024/65265