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グリーンランド北西部カナック周辺での雪氷観測

雪氷課題の研究チームは、グリーンランド北西部カナック周辺の氷床上(SIGMA-A)と氷床から隔絶された氷帽上(SIGMA-B)の2カ所に自動気象観測装置(Automatic Weather Station: AWS)を設置してデータを取得しています。今夏は、研究チームのメンバーが現地を訪れ、AWSのメンテナンスや気象・雪氷物理観測を行います。活動の様子を写真と共にお伝えします。

目次
グリーンランド北西部カナック氷河における赤雪およびクリオコナイトの観測(2022/8/5)New!
カナック観測拠点での気象・エアロゾル観測と降水サンプリング(2022/8/5)
カナック氷帽上SIGMA-BサイトのAWS更新作業完了!(2022/8/4)
グリーンランド北西部カナック氷河におけるアイスコア掘削(2022/8/4)
カナック氷帽上SIGMA-BサイトのAWS更新(2022/7/29)
SIGMA-Bにおける2022年6月後半から7月の顕著な積雪融解(2022/7/25)
カナック氷河における雪氷微生物観測と氷河水サンプリング(2022/7/22)
グリーンランド北西部カナック村の様子(2022/7/22)
カナック氷帽上SIGMA-B往復雪氷・大気観測(2022/7/22)
SIGMA-Bサイト自動気象観測装置の更新作業が進んでいます(2022/7/13)
グリーンランド北西部カナック氷帽上の積雪調査(2022/7/13)

グリーンランド北西部カナック氷河における赤雪およびクリオコナイトの観測

執筆者:鈴木 拓海(千葉大学)

2022年8月3日、私たちは、カナック氷河において、赤雪とクリオコナイトの観測を行いました。

赤雪が氷河脇の積雪上に広く分布している
赤雪が氷河脇の積雪上に広く分布している
雪面に現れたパッチ状の赤雪
雪面に現れたパッチ状の赤雪

氷河の脇に、雪が残っている箇所があり、表面が赤く染まっている様子が観察されました。

また、氷河上はクリオコナイトが広く分布しており、黒く染まっている様子が観察されましたが、氷河末端付近では、クリオコナイトホールが形成されており、表面は白い状態を維持していました。

氷河表面には水流とクリオコナイトが分布している
氷河表面には水流とクリオコナイトが分布している

得られた試料から色素を抽出してみると、その様子がよくわかります。
今後、その要因について分析を進めていく予定です。

色素を有機溶媒に抽出。左から、赤雪、暗色氷、白色氷。
色素を有機溶媒に抽出。左から、赤雪、暗色氷、白色氷。

(2022/8/5)

カナック観測拠点での気象・エアロゾル観測と降水サンプリング

執筆者:梶川 友貴(筑波大学)
西村 基志(国立極地研究所)

2022年7月20日からカナック観測拠点に、降水サンプラ、ディスドロメータ、寒冷地仕様のPM2.5測定装置を設置し、観測を開始しました。降水試料の化学成分や同位体比の情報から、降水の起源や大気汚染物質との関係について調査します。また、これらの観測・分析データを気象化学-同位体モデルの計算結果と比較することで、モデルの精度の評価や改良を進める予定です。

レーザー雨滴計(手前)を用いて雨滴径や降水量を測定し、PM2.5測定装置(奥)を用いて大気汚染の実態を調査する
レーザー雨滴計(手前)を用いて雨滴径や降水量を測定し、PM2.5測定装置(奥)を用いて大気汚染の実態を調査する
降水採取装置で得られた試料から、降水中の化学成分や水安定同位体比情報を取得する
降水採取装置で得られた試料から、降水中の化学成分や水安定同位体比情報を取得する

それらの降水、沈着物質の観測に加えて、使用済みのAWS機材を用いた気象観測を8月2日から観測拠点において開始しました。今まで継続して整備を続けてきた氷帽、氷床上の観測サイトとは異なり、標高が低く沿岸に近い非雪氷面上での観測データを得ることが出来ます。このデータはグリーンランド低標高域の気象特性を知ることが出来るだけではなく、グリーンランド広域の気候を理解するための貴重な実測データとなります。

観測メンバー滞在中の短い期間でしか実施できない観測も中にはありますが、「拠点に長期滞在可能」という恵まれた環境の中で最大限のデータを得られるよう、協力して集中観測を実施しています。

カナック観測拠点に新たに設置した気象観測装置
カナック観測拠点に新たに設置した気象観測装置

(2022/8/5)

カナック氷帽上SIGMA-BサイトのAWS更新作業完了!

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

AWS電源となるバッテリーとバッテリーBOXを歩荷するメンバー(左:梶川友貴さん、右:鈴木拓海さん)
AWS電源となるバッテリーとバッテリーBOXを歩荷するメンバー(左:梶川友貴さん、右:鈴木拓海さん)
AWSを固定するワイヤーを調整する鈴木拓海さん(千葉大学)
AWSを固定するワイヤーを調整する鈴木拓海さん(千葉大学)

6月下旬から進めていたグリーンランド北西部のカナック氷帽上に設置してある自動気象観測装置(AWS)の更新作業を7月31日に全て終了しました。最終作業として観測機材の電源となるバッテリーの交換と、ワイヤーステーによるAWSの固定作業を行いました。様々なアクシデントに見舞われ、当初の計画通りには全く進まなかった今年のAWS更新作業ですが、幾度にもわたるチームメンバーの地道な作業の末、1カ月間かけて作業を完遂しました。

更新作業を終え、氷帽上に立つAWS
更新作業を終え、氷帽上に立つAWS

環境モニタリングのための気象観測は長期データを継続して取り続けることが重要です。今年の作業で全ての機材が交換されたので、今後も継続して観測体制を維持することが出来ます。このデータを用いた北極域研究はもちろん、関連する様々な波及効果を期待します。

(2022/8/4)

グリーンランド北西部カナック氷河におけるアイスコア掘削

執筆者:鈴木 拓海(千葉大学)

ドローン空撮による、表面状態の観測
ドローン空撮による、表面状態の観測
アイスコアを掘り、氷河内部の状態を観察する
アイスコアを掘り、氷河内部の状態を観察する

グリーンランド北西部のカナック氷河にてアイスコア掘削を行いました。アイスコアを掘ることで、氷河内部にクリオコナイト(微生物と鉱物のかたまり)が含まれているかどうかを確かめることができました。また、表面が黒っぽくなっている箇所や黒っぽくなっていない箇所の両方で、氷を採取しました。さらに、上空からドローンによる観察を行い、黒っぽい部分とそうでない部分をはっきりと撮影しました。今後、黒っぽくなっている氷に含まれている微生物の分析を進めようと思います。

アイスコア。表面付近にクリオコナイト層がある
アイスコア。表面付近にクリオコナイト層がある。

(2022/8/4)

カナック氷帽上SIGMA-BサイトのAWS更新

執筆者:青木 輝夫(国立極地研究所)

2022年7月25日、再び快晴の好条件のもとSIGMA-B サイト(標高940 m)往復、新しいデータロガーやセンサー交換、近赤外アルベドメータの設置などを実施しました。これで数年間はエラーの少ない観測データが得られるものと期待されます。残り、バッテリの交換を後日実施する予定。氷帽上で重い荷物を歩荷(ボッカ)してくれた西村さん、鈴木さん、梶川さんに感謝します。

カナック氷帽のボッカ達
カナック氷帽のボッカ達
SIGMA-Bサイトの自動気象観測装置設置風景
SIGMA-Bサイトの自動気象観測装置設置風景
自動気象観測装置設置終了後の記念撮影
自動気象観測装置設置終了後の記念撮影

(2022/7/29)

SIGMA-Bにおける2022年6月後半から7月の顕著な積雪融解

執筆者:青木 輝夫(国立極地研究所)

2022年6月20日のSIGMA-B自動気象観測装置
約1カ月後のSIGMA-B AWS(2022年7月18日)

これら2枚の写真は、SIGMA-Bサイトで2022年6月20日と、その約1カ月後の7月18日に撮影されたもので、雪面が大きく低下していることがわかります。図に示すように、この1カ月間、SIGMA-Bサイトでは気温がプラスの日が多く、約70 cmの積雪高度の低下が観測されました。

2022年6-7月にSIGMA-Bで観測された気温と積雪高度
2022年6月後半から7月にかけSIGMA-Bでは暖かな気象条件が維持し、顕著な融雪が起こった。

(2022/7/25)

カナック氷河における雪氷微生物観測と氷河水サンプリング

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

グリーンランド北西部カナック氷帽のカナック氷河にて、雪氷微生物観測と氷河表面流水のサンプリングを行いました。融雪の進行と共に暗色化が進行してきたカナック氷河の消耗域において、暗色化の原因となる氷河表面に生息する雪氷微生物の同定や表面状態の分析を行います。

雪氷微生物が繁殖している積雪表面の反射率測定
雪氷微生物のサンプリング

また、氷河に涵養される水の起源や流出に至る水文過程の理解のために、氷河表面を流下する融解水を採取し、成分を分析します。

氷河表面水のサンプリング

現地で採取したサンプルは観測拠点にて、分析のための前処理を行います。限られた物資の中で最大限の成果を出せるよう、工夫を重ねて調査を進めています。

採取したサンプルの前処理の様子。不純物を取り除き、サンプルのpHを測定する。
採取した氷河表流水サンプルの前処理の様子。サンプル汚染を防ぐために不純物を取り除いている様子。

(2022/7/22)

グリーンランド北西部カナック村の様子

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

グリーンランド北西部のカナック氷帽にて雪氷・気象調査を行っています。その観測の拠点となっているカナック村では、海氷上で狩りを行う現地の住民や現地で飼われている犬と出会います。またカナックの短い夏には、ホッキョクヒナゲシなどの草花も姿を現します。

カナック村沿岸の海氷とカナック村の人々
グリーンランド犬とホッキョクヒナゲシ
カナック観測拠点

このような人々や動植物に囲まれながら生活すると共に、日々変化する自然と向き合っています。

(2022/7/22)

カナック氷帽上SIGMA-B往復雪氷・大気観測

執筆者:青木 輝夫(国立極地研究所)

SIGMA-Bサイトの自動気象観測装置

2022年7月18日、快晴の好条件のもとSIGMA-Bサイト(標高940 m)往復、途中にデポしてあったAWS用バッテリー約50 kgを荷揚げ、SIGMA-Bで積雪断面観測、衛星同期観測、復路の上流域で雪氷微生物・アルベド観測、雪氷サンプリング実施。11時間の活動ながら、素晴らしい北極の1日を堪能しました。しかし、先遣隊から6月に報告があった積雪深が大幅に減っているのが気になります。

SIGMA-Bにおける観測風景(左から、梶川さん・鈴木さん・西村さん)
SIGMA-Bサイト近くで見つかったクラック(小さなクレバス、幅5~10 cmのものが5カ所)
雪氷微生物で汚れた氷河表面
雪氷微生物サンプリング(右から鈴木さん・西村さん)

(2022/7/22)

SIGMA-Bサイト自動気象観測装置の更新作業が進んでいます

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

グリーンランド北西部カナック氷帽上に2012年以降設置していた自動気象観測装置のメンテナンスを行っています。観測サイトへは片道4時間かかり、人力で作業に必要な道具、機材等を運びます。

観測サイトへの道中で積雪深調査

今年度は観測装置の大規模な更新を行っており、限られた人員で計画的に作業を進めています。
作業は6月下旬から開始し、着々と更新作業が進んでいます。

SIGMA-B自動気象観測装置の更新作業
更新された気象観測センサー

(2022/7/13)

グリーンランド北西部カナック氷帽上の積雪調査

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

調査チームメンバーの専門に特化した積雪調査、積雪サンプリングなどをカナック氷帽上で行っています。

観測サイトへの道中で積雪深調査

比較的標高の低い氷帽の表面状態は、短い夏季の間で日々変化するため高頻度で観測を行うことが重要です。

表面積雪サンプリングの様子
積雪表面サンプリングと反射率測定の様子

(2022/7/13)

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